理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 723
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理学療法基礎系
シスプラチンによって引き起こされる痛覚過敏のメカニズムの解析
―筋の圧痛に着目して―
*堀 紀代美尾崎 紀之篠田 雅路鈴木 重行杉浦 康夫
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抄録
【目的】慢性痛は理学療法の対象となることが多く、臨床現場では、物理療法や運動療法などを行い、痛みの緩和または消失を得、関節可動域の改善や筋力を発揮させることが基本の1つである。しかし、慢性痛の病態やメカニズムについては未知な点が多い。本研究では代表的な難治性慢性痛である神経因性疼痛の動物モデルのひとつであるシスプラチン処理ラットにみられる痛覚過敏のメカニズムを明らかにすることを目的とする。特に、これまで解析されてきた皮膚の痛覚過敏のみならず、シスプラチンによって筋にも痛みが誘発されるかどうか検討した。
【対象・方法】本研究の実験計画は名古屋大学医学部動物実験委員会の承認を受けて行った。対象としてSD雄性ラット(388.0±4.4g、n=25)をシスプラチン投与群(CDDP群、n=12)と対照群(n=13)の2群に分け、CDDP群にはシスプラチンを週1回全5回、腹腔内に投与した(累積投与量15ml/kg)。対象群には溶媒である生理食塩水のみを投与した。両群ともに投与前後5週にわたり、体重ならびに行動学的評価を行った。行動学的評価として、皮膚の痛覚の評価のために、足底部皮膚へのvon Frey test、Pin-prick test、Hot plate testを行った。筋の痛覚の評価のために、腓腹筋を用いたRandall-Selitto法による圧痛閾値の測定と、筋炎の動物モデルで筋の痛みを反映するとされている筋力の測定を行った。腓腹筋の圧痛閾値に表層の皮膚の痛覚が及ぼす影響を調べるため、下腿後面(腓腹筋表層)の皮膚においてもvon Frey testを行った。行動学的評価の終了後、腓腹筋に分布する感覚神経を逆行性トレーサー(フルオロゴールド)で標識し、後根神経節内の腓腹筋の知覚ニューロンで、痛み関連の受容体であるTRPV1、TRPV2、P2X3、ASIC3の発現を調べた。
【結果と考察】CDDP群は用量に依存して有意に体重が減少した。足底のvon Frey test、Pin-prick testおよび下腿表層のvon Frey testより、CDDP群に皮膚の機械的痛覚過敏の存在が確認された。また、Hot plate testにより、皮膚の侵害刺激に対してCDDP群は鈍麻となる傾向が確認された。腓腹筋の圧痛試験においてもCDDP群は有意に閾値の低下を認め、筋力も低下し、筋の痛覚過敏の存在が示唆された。組織学的には後根神経節における筋由来の知覚ニューロンにおいてTRPV1、P2X3陽性細胞の発現を認め、シスプラチン投与による筋の痛覚過敏に関与していることが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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