理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 657
会議情報

理学療法基礎系
近赤外分光法を用いたストレッチおよび抵抗運動後の筋酸素動態の比較
*福永 誠司安楽 淳子田上 茂雄湯地 忠彦東 祐二藤元 登四郎関根 紀子田村 俊世
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
 脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)において非麻痺側の機能は重要であり,麻痺側の機能を補う必要がある.歩行訓練前の運動療法としてストレッチや抵抗運動があげられる.これらは筋の収縮性や柔軟性を改善し,筋力の回復や保持などを目的として行われる.しかし,定量的な評価は難しくセラピストの主観に左右されやすい.そこで今回,近赤外分光法による筋酸素モニタを用いて下腿三頭筋の局所筋酸素動態を測定し,それぞれの運動課題が与える影響を比較した.

【方法】
 対象は,健常者5名(年齢22.8±1.8歳),片麻痺患者8名(年齢61.4±14.8歳)とした.片麻痺患者の機能評価は下肢Brunnstrom stage IV,金属支柱付き短下肢装具2名,プラスチック短下肢装具6名,歩行レベルは,屋内自立5名,監視3名であった.運動課題は,歩行,ストレッチ・歩行,抵抗運動・歩行の3種類とし,課題の前後で5分間の安静時間を設けた.歩行距離は10m,ストレッチは20度足関節背屈位にて30秒間,抵抗運動は徒手筋力テスト4レベルとした.測定部位は下腿三頭筋とし,片麻痺患者では非麻痺側とした.解析は,歩行前後のヘモグロビン酸素動態(以下oxyHb),総ヘモグロビンの変化量(以下tHb),回復時間について行った.さらに歩行前後の動脈血酸素飽和度(以下SpO2)を測定した.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を得,すべての対象者に実験の主旨を説明し,同意を得た後に行った.

【結果】
 健常者において,最もoxyHbが減少し低酸素状態を示したのは抵抗運動時であった.tHbでは4名で抵抗運動・歩行後が最も高く,血流の増加を認めた.片麻痺患者で最もoxyHbが減少したのは抵抗運動時であった.また,ストレッチ時には5名でoxyHbが減少した.tHbでは6名で抵抗運動・歩行後が,2名でストレッチ・歩行後が最も高く血流の増加を認めた.回復時間では,片麻痺患者に比べ健常者で回復時間が短い傾向がみられた.

【考察】
 片麻痺患者においてストレッチ・歩行後に酸素化が大きいのは,歩行前のストレッチが歩行を行う準備として効果的であったためと考えられる.一方,すべての被験者で抵抗運動時に最もoxyHbが減少し,抵抗運動・歩行後回復期の血流量が増加したことから,抵抗運動は筋収縮を伴わないストレッチに比べ血流量の増加を引き起こす.そのため,抵抗運動が引き起こしたoxyHbの減少を補うために血流量が増加したものと考えられる.片麻痺患者の回復時間が健常者よりも大きな値を示したことは,日常生活場面で非麻痺側を使用する機会が少なく,エネルギー産生効率が悪かったためと考えられる.今回ストレッチと抵抗運動を比較した結果,抵抗運動の方が筋に与える影響が大きかったことから,片麻痺患者にとって抵抗運動は有用であるものと推測された.
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top