抄録
【はじめに】
体幹アライメントは姿勢や動作に大きく影響するといわれている。これまでに体幹アライメントによって下肢の運動力学的要素が異なることを示した報告はあるが、一方下肢アライメントとの関係を検討した報告は少ない。臨床場面においても体幹アライメントによって下肢アライメントの動的変化が異なることが観察される。動作時に身体の各体節の配列が相互的に作用することを考えると、動作時の体幹アライメントと下肢アライメントとの関係を考慮する必要がある。そこで、歩行中の体幹アライメントと下肢アライメントの関係を明らかにすることを目的として本研究を行った。
【方法】
対象は健常者15名(男性6名、女性9名、平均年齢20.4±3.7歳)とした。被験者の両側肩峰、上前腸骨棘、下前腸骨棘、股関節、膝関節、外果、第5中足骨頭の計12点に標点を貼付し、至適速度での歩行を三次元動作解析システムVICON612(Vicon Motion Systems社製)、床反力計(AMTI社製)で計測した。計測は一名につき5回実施した。得られた計測値より歩行時の身体重心位置、骨盤角度、大腿角度、下腿角度を算出した。また両側足圧中心点座標から両脚支持期における支持基底面を求めた。今回は体幹アライメントの指標として骨盤角度を、下肢アライメントの指標として大腿角度、下腿角度を用いることとした。歩行1周期中のこれらのデータをもとに1.骨盤角度と大腿および下腿角度の関係、2.骨盤角度と身体重心との関係について分析を行った。なお、今回は各データとも矢状面上の変化のみを検討した。
【結果】
1.骨盤角度、大腿および下腿角度の関係
骨盤角度、大腿角度および下腿角度の1歩行周期中における変化量に一定の関係を認めなかった。しかし、踵接地時における角度では、骨盤の前方傾斜角度が大きい例で大腿の傾斜角度が大きくなり(p<0.01)、下腿角度では逆に傾斜角度が小さくなる傾向を認めた(p<0.10)。
2.骨盤角度と身体重心との関係
身体重心の進行方向変位は全例で同様の結果であり、両脚支持期開始時点において全例で支持基底面のほぼ中央に位置していた。
【考察】
今回の結果から、歩行中における矢状面上での骨盤の傾斜角度によって踵接地時の下肢アライメントが異なることがわかった。一方、身体重心は骨盤の傾斜角度に関わらず踵接地時には支持基底面のほぼ中央に位置していた。歩行時の足の配置は骨盤との相対的な位置によって決定されるというRedfernらの報告を踏まえて考えると、歩行時体幹アライメントの変化と対応して大腿と下腿では相補的に配列を変えている可能性を示唆している。逆に、足部の接地面が不安定など下肢アライメントが変化せざるをえない環境下においては、体幹部分でそれに対応できる機能を備えることが臨床上重要になると考える。今後、三次元的な解釈を進める必要があると考えている。