理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1036
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理学療法基礎系
健常者の起立動作時における膝関節の内外反角度の変化と股関節回旋への影響
*佐藤 史子石井 慎一郎
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抄録
【目的】
起立動作は、膝関節に最も負担のかかる動作である。膝関節屈曲位では,大殿筋による股関節を中心とした大腿の回転作用が,大腿脛骨関節面に接合力を生じさせ膝関節を安定化させるのに役立つとされている.一方、大殿筋の別の作用である、大腿骨の回旋作用もまた、動作中に大腿脛骨関節にける内外側コンパートメントの適合性を高めて、関節の動的安定化に寄与しているものと推測されている。本研究の目的は、起立動作時における股関節回旋モーメントが膝関節の安定化にどのように関係しているのかを調べる事である。

【方法】
下肢に既往がない健常者11名(男子4名、女子7名、平均年齢19.8歳)を対象とした。
 被験者の体表の所定の位置に赤外線反射マーカを貼付し、高さ45cmの椅子から立ち上がる際の、マーカ座標データと床反力を3次元動作解析装置VICON612(VICON MOTION SYSTEM社)および床反力計(AMTI社)を使用して計測した。得られたデータから、歩行解析ソフトPlug in Gait(VICON MOTION SYSTEM社)を使用して、股関節回旋モーメントおよび膝関節内外反角度を算出した。データ解析は、膝関節の安定化に特に重要と考えられる離殿時の股関節回旋モーメントに注目し、股関節外旋モーメントを発揮した群と、内旋モーメントを発揮した群の2群に分類し両群間の膝関節内外反角度の最大値を求め比較した。

【結果】
離殿時に股関節外旋モーメントを発揮した群(以下外旋群)は5名、内旋モーメントを発揮した群(以下内旋群)は6名であった。回旋モーメントの平均値は外旋群5.75Nm/kg 内旋群10.27Nm/kgであった。また、膝内内外反角度最大値の両群の平均値は、外反角度は外旋群7.50°内旋群15.22°、内反角度は外旋群6.77°内旋群8.84°であり、外旋群で膝関節の内外反角度が内旋群よりも小さくなる傾向にあった。

【考察】
離殿時に股関節外旋モーメントを発生した群の方が膝の内外反角度の変化は小さく、膝の動揺が少ないことがわかった。これは、膝関節屈曲位での動的安定化に、大殿筋による股関節外旋モーメントが関与しているという説を裏付ける結果である。大殿筋による股関節の外旋は、大腿骨を外旋させる。大腿骨の外旋により膝関節内では、内側外側コンパートメントの両者が接合力を得られるため、関節の形態的安定化が得られやすく、動作中の膝関節の内外反動揺を制動できたものと考察される。また、大腿骨の外旋により膝関節は相対的内旋位を保持し続けられるため、中心靭帯による安定化機構が働きやすくなる。このような理由から、動作中の膝関節の内外反動揺が小さくなったものと考察する。一方、股関節の外旋モーメントが発揮できていない群では、膝関節の内外反動揺が大きく、関節の動的安定が図れない事から、関節症変化などの原因として、今後さらに関連性についての検討が必要であると考えられる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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