理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1104
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理学療法基礎系
健常成人女性の片脚立位姿勢保持と下肢筋力及び足底感覚との関係
*山中 みちる村田 伸中島 聖二加藤 裕幸
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抄録

【緒言】片脚立位は、開眼で30秒以上起立できない場合、閉眼で30秒以内に3回以上床に足を着く場合が異常とされ、その基準値が明確にされていることや、長年の基礎データが蓄積されている点から有用と思える。片脚立位保持能力とその関連要因についての先行研究は、握力や大腿四頭筋筋力について報告されているが、総合的に身体機能を測定し検討されたものは少ない。本研究では、片脚立位に影響を及ぼすことが考えられる下肢筋力や足底の二点識別覚などを測定し、それぞれの因子と片脚立位での重心動揺との関連性を検討した。
【対象と方法】対象は健常な成人女性33名、平均年齢22.2±2.6歳、平均体重50.4±6.8kg、平均身長159.0±5.3cmである。なお、これら対象者には研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た上で研究を開始した。測定した項目は、片脚立位での重心動揺、足底の二点識別覚、腸腰筋・大殿筋・中殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングス・前脛骨筋・腓骨筋の筋力である。重心動揺測定は、重心動揺計を用いて、利き足の片脚立位(裸足)を30秒間保持させたときの外周面積を採用した。足底の二点識別覚は、踵部および母指球部における二点として識別できる最少距離をノギスを用いて測定した。下肢の筋力測定は、ハンドヘルドダイナモメーターを用い、第6版新・徒手筋力検査法(MMT)の段階5に準じて測定した。全ての検査は可能な限り静寂な場所で行なった。なお、統計処理はピアソンの相関係数を用い、有意水準は5%とした。
【結果】重心動揺と二点識別覚との関係は、有意な正の相関が認められた(r=0.56、P<0.01)。重心動揺と下肢筋力との関係は、中殿筋(r=-0.44、P<0.05)・大腿四頭筋(r=-0.41、P<0.05)・腓骨筋(r=-0.44、P<0.05)には、有意な負の相関が認められ、腸腰筋(r=- 0.18)・大殿筋(r=-0.02)・ハムストリングス(r=-0.04)・前脛骨筋(r=-0.13)には有意な相関は認められなかった。
【考察】片脚立位姿勢保持での重心動揺と足底の二点識別覚、中殿筋・大腿四頭筋・腓骨筋の筋力値との間に有意な相関が認められた。すなわち、足底の感覚が敏感なほど、中殿筋・大腿四頭筋・腓骨筋の筋力が強いほど、片脚立位姿勢が安定していることが示唆された。これらの知見から、片脚立位姿勢をより安定させるためには、足底の感覚入力を高め、下肢の筋力の中でも、とくに中殿筋、大腿四頭筋、腓骨筋の筋力をトレーニングすることが効果的である可能性が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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