抄録
【目的】本研究の目的は健常若年男性で直立位および体験前屈時に流速の違う努力性呼気を行った場合,体幹と下肢筋にどのような影響を及ぼすか解明し、走行の異なる体幹屈筋・伸筋群の活動性に違いがあるか検討することであった。
【方法】対象は健常若年男性12名.平均年齢26歳(19~32歳),身長171±7.2cm,体重65.2±7.6kgであった.脊椎の変形,腰痛の既往はなく,事前に実験概要を口頭にて説明し,書面にて参加の同意を得た.被検筋はすべて右側で,外腹斜筋(EO),腹直筋(RA),内腹斜筋(IO),腸肋筋(IC),最長筋(LO),多裂筋(MF),大殿筋(GM)および大腿二頭筋(BF)とした.表面電極間距離は3cmとし,サンプリング周波数を500Hz,Low-cut10Hz,Hi-cut200Hzに設定し,マルチテレメータシステム(日本光電社製WEB5000)で収集した.呼気時の体幹の動きは3次元動作解析装置(OxfordMetrics製Vicon370)で計測した.被検者の第7頚椎棘突起,第10胸椎棘突起,第1および4腰椎棘突起,左右のASIS,PSIS,大転子,膝関節,外果,および胸骨切痕部と剣状突起部にrig付きの直径2.5cm反射マーカーを添付し,6台のカメラにて解析した.
呼気流速は呼吸機能検査装置(SensorMedics製Vmax29c)で測定した.被検者の肢位は直立位と体幹30度前屈位の2肢位とした.努力性呼気は,軽く吐く,中くらい吐く,最大に吐くの3条件でそれぞれ2回測定し,被検者ごとにランダムに測定した.筋活動と呼気流速はともにサンプリング周波数480HzでViconと同期させて収集した.計測前にスパイロメータ(日本光電製マイクロスパイロHI-201)を用いて被検者の最大呼気流速(PEF)を2回測定し,最大値を採用した.3条件の努力性呼気流速は最大値(100%)に対する割合(%PEF)を算出した.2肢位の安静呼吸時における1秒間の全波整流後の積分筋電量(IEMG)を8被験筋で求めてこれを100%とし,努力性呼気時に流速がピークに達した前後1秒間の同量の値に対する割合(%IEMG)を各筋で求めた.各個人の2回の%PEFと%IEMGの平均値を求め,2変数の関係はピアソン相関係数を用いて求めた.統計処理にはSPSSを使用し,有意水準は危険率5%未満とした.
【結果】直立と30度前屈位での3条件の呼気流速に有意な差は認めなかった.直立位において,%PEFと%IEMGはLOを除いた全ての筋で有意な相関を示した.30度前屈位ではEO,IOおよびMFで2変数間に相関を認めたが,その他の筋では認めなかった.
【考察】体幹前屈位ではRAが短縮し,努力性呼気時に活動しにくいと考えられ,EO,IOの活動が優位になると思われる.EO,IOの弱化は脊柱の安定性に影響を及ぼす可能性があり,これら深部筋のトレーニングは重要であると示唆された.