理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1122
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理学療法基礎系
間葉系幹細胞から骨,軟骨をつくる
―細胞の形態変化と分化―
*梅田 知佳河原 裕美吉元 玲子弓削 類
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抄録
【目的】
 近年,多能性幹細胞を使った再生医療に関する研究が始まり,21世紀の医療技術として期待されている.間葉系幹細胞human mesenchymal stem cell(hMSC)は,ヒトの骨髄中に存在し,サイトカイン等を培養液に添加し,分化誘導をかけることにより骨,軟骨,靱帯,腱,脂肪,神経を造り出すことができる.しかし,その分化誘導のメカニズムに関する形態学的研究報告は少ない.本研究では,hMSCから骨芽細胞,軟骨細胞へ分化誘導を行った場合の形態学的変化,特に細胞骨格と分化マーカーの経時的変化について検討した.

【方法】
 hMSCを用い細胞増殖用培地にて培養した.実験は3群に分けて経時的変化をみた.1)細胞増殖用培地で培養し,分化誘導しないものを非分化群,2)骨芽細胞へ分化誘導したものを骨芽群,3)軟骨細胞へ分化誘導したものを軟骨群とした.形態学的観察を位相差顕微鏡及び細胞骨格を免疫染色法にて行った.分子生物学的検討は,western blot法およびRT-PCR法によるOsteocalcinとtype II collagenのタンパク質およびmRNA発現を検出した.

【結果】
 1)形態学的観察:骨芽群では,分化の形態的指標である骨結節を形成した.アクチンフィラメントの発現は強かったが,ストレスファイバーは形成せず,ビンキュリンの発現は少なかった.軟骨群では,ストレスファイバー,ビンキュリンともに発現が強く,フォーカルコンタクトを多く形成し,経時的に増加した.2)分子生物学的検討:type II collagenの発現は,非分化群,骨芽群では経時的にみられなかったが,軟骨群では強い発現がみられた.Osteocalcinの発現は,骨芽群において軟骨群より強い発現がみられた.

【考察とまとめ】
 細胞の形態は,主に細胞骨格の一つであるアクチンフィラメントにより維持されている.そのアクチンフィラメントがストレスファイバーを形成し,さらにストレスファイバーの先端にはビンキュリンという細胞接着分子がある.今回の結果より,hMSCに人為的に分化誘導をかけることで,細胞形態の違う骨芽細胞と軟骨細胞を造り出すことができた.このメカニズムを解明するために,細胞骨格の変化を観察したところ,アクチンフィラメントおよびビンキュリンの発現のパターンが違っていた.このことより,骨芽細胞,軟骨細胞においても細胞の形態決定には,細胞骨格の形成が深く関連していることが示唆された.今後はストレスファイバーなどの細胞骨格の形成や細胞分裂を誘導していると言われている低分子Gタンパク質Rhoに着目し,再生医療に対する理学療法学の裏付けとなるような研究を進めたい.
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© 2005 日本理学療法士協会
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