抄録
【目的】
我々は、拮抗筋に電気刺激し、その収縮を主動筋の抵抗とする筋力増強法(Hybrid法)を考案した。この方法では主動筋の運動により電気的に収縮させた拮抗筋を遠心性収縮させるため、筋損傷を引き起こす可能性が危惧される。そこで肘の屈伸運動をHybrid法、電気刺激のみによる運動、通常の重錘を用いた運動をそれぞれ行い安全性を検討した。
【方法】
健常男性5人、平均年齢18歳を対象とし、Hybrid法、電気刺激を単独で行う法(ES法)、重錘運動を行う法(Dumbbell法)の3つの運動をそれぞれ1週毎に行った。運動はいずれも非利き手側で行った。Hybrid法では、電気刺激に抗して屈曲30度から120度までの可動域で、屈曲2秒、伸展2秒の屈伸運動を行った。ES法では、肘関節を30度屈曲位で固定し等尺性収縮にて、Hybrid法と同一の電気刺激方法にて行った。Dumbbell法では、屈曲最大随意等尺性筋力の40%を重錘の重さとして、運動範囲はHybrid法と同様に行った。施行回数は3つの方法とも10回を1セットし10回、セット間には1分間の休憩にて行った。筋損傷の評価は、血中のcreatine kinase(CK)とlactate dehydrogenase (LDH)を実施前、訓練直後、1日目、2日目、7日目にそれぞれ測定し、実施前に対する各時期の増加率を求め比較した。また、同時期に圧痛、自発痛、関節可動域などのメディカルチェックを行った。
【結果】
実施直後には増加は認められなかったが、CKは1日目においてHybrid法で約13%の増加、Dumbbell法で12%の増加が認められた。2日目と7日目では増加は認められなかった。LDHも1日目にDumbbell法で増加を認めた。すべての群に遅発性筋痛を訴えるものがいたが、日常生活に支障をきたすほどなかった。
【考察】
Hybrid法は、拮抗筋を電気的に収縮させながら主動筋の運動により遠心性収縮を行わせるため筋損傷の可能性が考えられる。筋損傷の報告では、遠心性収縮で起こりやすいとされ、Brownらは、電気的遠心性収縮でも最大随意遠心性収縮時と同程度の筋損傷を起こすと報告している。そこで、本法の安全性を確認するためCK、LDHを用いて検討した。CKは骨格筋損傷の診断に用いられ、LDHは筋疲労の程度を表すと言われている。本実験において、Hybrid法はES法、Dumbbell法と比較してもCK、LDHに増加は認められなかった。その要因として電気刺激強度が最大筋力の20%程度と極めて低いことや1回の訓練によるそれぞれの筋への電気刺激が3分20秒と短いためと考えられる。