抄録
【はじめに】脳性麻痺では筋緊張の異常により正常の運動発達が阻害され、筋・腱の短縮や、関節の拘縮・変形が発生する。当センターでは骨関節変形、異常姿勢、ADLの改善を目標とし筋・腱延長術とその前後における理学療法を実施している。今回、痙直型両麻痺児3症例の術後理学療法を経験し、実施上の留意点や理学療法の効果について検討したので報告する。
【対象】平成14年-15年に当センターにおいて股関節周囲筋延長術を施行し、術前評価および術後6ヶ月間以上の理学療法を当センターにて実施した未就学の3症例。平均手術時年齢5.2歳(4.5~6.0歳)、平均術後在院日数67.3±14.6日(入院期間の短かった順に症例A,B,Cとする。)いずれも早産、低出生体重であった。症例A,Bは就学に向け安全な移動方法の獲得(歩容改善)。症例Cは右股関節亜脱臼の改善とトイレ使用時の痛みの解消と介助量軽減を手術目標とした。
【術前後の流れ】1.外来にて手術の適応検討と目標設定(できるだけADLに即した目標)。2.入院時、術前評価と目標の再確認。(1.2.とも患児、家族、医師、PTが一同に会し実施)3.手術施行。4.術後1週間以内に理学療法開始(週3~5回で退院まで継続、プログラム内容はストレッチング、筋力強化、ADL練習、歩行練習、家族指導など。)5.退院後、症例に応じて週1~2回の個別訓練(6ヶ月以上。)
【評価内容】術前・退院時・術後6ヶ月時点でROM、姿勢異常、ADL、痛み等を評価し考察を加えた。
【結果】術前後の身体症状(ROM、姿勢異常)およびADLは、改善が認められ、3症例とも手術目標を達成した。症例Aは術後4週目に術前の移動能力を再獲得し、異常姿勢も改善した。「歩き方が他の子と違う」というコンプレックスが解消し、QOLの向上につながった。症例B,Cは、退院時にわずかにかがみ肢位が残存していたが、退院後6ヶ月の評価時には、改善が認められた。
【考察】痙直型両麻痺児に対する筋・腱延長術において、手術目標の共有化は、患児と家族、理学療法士、医師との信頼関係を構築し、術後の具体的な訓練プログラムの遂行に有用であった。また、術後早期に介入することにより、患児の痛みや不安を軽減することができた。腹部低緊張を伴う例では異常姿勢の改善に期間を要すため、PT継続期間として6ヶ月間程度が必要であることが示唆され、術後の外来通院が比較的容易な就学前に実施できたことも能力向上に影響したと考えた。これらの治療により、機能改善、能力向上に加え、QOL改善に貢献することができ、手術の意義を更に広げることができた。