理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 46
会議情報

神経系理学療法
食事動作が重度障害児の姿勢の発達に影響を与える可能性について
*中川 尚子中山 いずみ原 寛道
著者情報
キーワード: 重複障害, 小児, 摂食
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】安定した姿勢が保持できない障害児に対してごく初期から理学療法士が単独で関わる可能性は高い。感覚や認知面にも問題がある場合対応に苦慮する。今回、作業療法士と協力し摂食指導を行ったところ理学療法だけでは得られなかった、姿勢適応への著しい改善が見られた事例を報告する。
【症例紹介】Kちゃん 平成14年7月生まれ。診断名:脳性麻痺、孔脳症、てんかん。在胎41週、生下時体重3598g、Apgar-Score9/10。心室中隔欠損を合併し生後2ヶ月で閉鎖術施行。同時期にけいれんを認め内服を開始。生後8ヶ月で当センター初診、未定頚、追視・注視も見られなかった。初診時のGMFCSは5レベル。麻痺像は痙性固縮失調いずれも不明瞭な分類困難型であるが、左右ハムストリングスの短縮と右手握りしめ傾向は明白であった。週1回の外来理学療法を開始。
【理学療法開始時の状況(9ヶ月)】背臥位では頭部の回旋運動が少ない。介助座位で頭部の安定は頚部を過伸展させて保っていた。腹臥位は嫌がり、体幹を反らし、肩甲帯も後退、股関節伸展させていた。
【摂食指導導入時の状況(1歳6ヶ月)】背臥位で頭部を回旋、腹臥位を他動的に一瞬保持可能といった発達は見られたが理学療法開始時と比べてさほど変化がなく、姿勢に直接アプローチする理学療法のみでは行き詰まりを感じた。そこで遅れが目立ち家族からのニーズも高い摂食動作に方針を変更した。
【摂食指導の内容】3食ともミルクが主であり、初期の離乳食でも口の中にたまり咽頭への送り込みが困難で、反り返りながら嚥下をしていた。食塊を舌の中央部に置くことと取り込み時に口唇の閉じを待つことを指導。1ヵ月後には舌の動きを促すために口腔内の刺激遊びを指導。約3ヵ月後から口唇を閉じて嚥下する回数が増えた。簡易型の姿勢保持いすも作成。スプーンの接触や食物の臭いに刺激され口を開けるなどの予測的な動きが見られる様になった。
【摂食指導開始後の運動機能の変化】摂食指導開始2ヵ月後に寝返り、3ヵ月後に自ら腹臥位の保持が可能と急激な変化を見せた。6ヵ月後には頚部軽度屈曲位での座位保持、独力での寝返り移動、9ヵ月後にはプロンボードでの立位も可能となった。
【考 察】運動機能の障害だけでなく、光覚弁別困難という高度の視力障害と重度知的発達障害を合併しており、従来の理学療法の手技のみではヘッドコントロール獲得のための動機付けが困難であった。発達にもあまり変化が見られず、受け入れられる姿勢にも偏りがあった。そこで摂食へのアプローチに変更したところ、本人の能動的な反応が得られ、姿勢適応が広がった。食事場面では抗重力位でのポジショニングと食物という口腔への刺激が自発的な姿勢保持を誘発し、さらに能動的な摂食動作を通して姿勢調節を学習し、それらが腹臥位保持や寝返り移動といった機能の獲得につながったと考えられる。
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top