抄録
【はじめに】今回、急性再発により視覚障害・精神障害などの症状増悪を呈した二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者に対する自宅退院に向けての理学療法を経験した。多発性硬化症(MS)の理学療法における今後の課題を加え報告する。
【症例】35歳,女性,両親との3人暮らし。既往歴:1995年シェーグレン症候群にステロイドパルス療法施行。右眼視力低下残存。現病歴:1997年4月右側大腿骨頭壊死に対し人工骨頭置換術施行後、発熱・意識低下呈しMS発症。同年6月脊髄性感覚障害、排尿障害にて再発。1999年2・3月両眼視力低下。2000年2月インターフェロン施行、肺炎合併し中止。同年5月~2003年2月3回再発。2004年6月両下肢脱力により再発。パルス療法施行し右側軽度失調症状、左鼻側のみ視野残存、片ロフストランド杖歩行で退院。退院後、外出は一人で可能。Kurzke分類(K分類)8点、EDSS6.0、McAlpine分類(M分類)2度。同年8月11日全身脱力、意識障害で入院。同年10月25日退院。
【経過】入院時所見8月12日:意識障害JCS2桁、両眼重度視力低下、不穏、右上下肢運動麻痺、両下腿の異常感覚、膀胱直腸障害。K分類23点、EDSS9.0、M分類6度。初期評価8月17日:精神症状(不穏・退行・HDS-R11点)、視力障害、右下肢MMT1、右側錐体路症状、右側失調症状、左側に強い両下腿感覚障害、排尿バルーン。治療経過8月12日~:プレドニンステロイド(PSL)60mgよりパルス療法開始。8月17日ベッドサイドリハ、退行強く他動運動中心に開始。8月27日リハ室にて座位、立位訓練開始。視野障害・精神症状重度のため簡単な口頭指示や重錘付加等を利用。精神面サポートを目的に病棟へ頻回に出向いた。8月31日~:PSL50~30mg。右膝装具使用し平行棒内介助歩行開始。徐々に従命現れ筋力訓練開始、全可動域で運動困難となったら過負荷とし回数はそれ以下に設定。9月21日歩行器付き添いにて病棟内歩行開始。左上鼻側の視力回復、HDS-R21点・右下肢MMT3に改善。9月27日~:PSL25~20mg。監視で立位保持1分以上可能。片ロフストランド杖歩行開始。易疲労を考慮し、歩行距離の設定は歩容不安定となった時点とした。10~20mより開始。退院前:自己導尿可能。付き添い歩行30m以上。歩行介助や易疲労などについて十分な家族指導を行い10月25日自宅退院。K分類11点、EDSS6.5、M分類4度。
【考察】本症例は頻回の再発によりSPMSとなり、精神症状など新たな症状や残存症状増悪を呈し治療に時間を要した。退院時は付き添い歩行可能となったが視覚障害・バランス障害が残存し、自立生活・社会参加困難となった。そのため家族に自宅内での介助歩行や筋力訓練の指導を行うことで長期的なサポートを図れたと考えられる。