理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 68
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神経系理学療法
視床出血における左右半球の違いは歩行に影響を与えるのか?
*大谷 武司宮嶋 武三澤 孝介植西 一弘北條 貴士室賀 一慶蒲原 幸子内山 直美羽多野 美映
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キーワード: 視床出血, 左右半球, 歩行
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抄録
(はじめに)一般的に視床は感覚の中枢として知られている。しかし、視床は脳の中核をなして多くの局在部位と線維連結している器官である。そのため損傷された場合、感覚障害の他にも多様な合併症が出現する。その中には視床性失調(以下、失調)、発症初期の意識障害、発動性障害や麻痺が観察される。それらの症状の合併は脳損傷が左半球か右半球かによって異なり、歩行に影響を与えることが推測される。今回、視床出血を発症し歩行自立した症例において、左右差が生じるのかを考察した。
(対象・方法)1997.4から2004.10までに当院において視床出血と診断された45例中、歩行自立した23例を対象とした。これを左視床出血症例(以下、左)13例と右視床出血症例(以下、右)10例に分類し、年齢、性別、発症からのリハ開始日数・歩行自立日数、歩行自立時の歩行補助具の種類、失調・発症初期の意識障害・発動性障害の有無、麻痺の重症度を調べ比較した。年齢・リハ開始日数・歩行自立日数はt検定にて検討した。なお、意識障害の有無はGCS12点以下を意識障害ありとし、13点以上を意識障害なしと定義した。麻痺の重傷度はブルンストロームステージから、I・IIが重度、III・IVが中等度、V・VIが軽度とした。歩行自立は、杖・装具等の有無を問わず45m以上の歩行が可能となった状態とした。
(結果)年齢は左が平均72歳(47から88歳)、右が平均68歳(45から78歳)。性別は左が男7例・女6例、右が男3例・女7例。リハ開始日数は左が平均1.5±0.2日(1から3日)、右が平均1.3±0.2日(1から3日)。歩行自立日数は左が平均29±4.9日(6から63日)、右が平均13±2.2日(5から30日)であり、有意差(5%)がみられた。歩行自立時の歩行補助具は左が杖なし1例・杖5例・歩行器4例・杖と短下肢装具3例、右が杖なし1例・杖5例・歩行器3例・杖と短下肢装具1例であった。失調は左が9例・右が6例であった。発症初期の意識障害は左に3例みられたが、右はみられなかった。発動性障害は左が9例(69%)・右が1例(10%)で左に多く、発症前に認められなかった記憶障害や意欲低下がみられた。麻痺は左が重度1例・中等度5例・軽度7例、右が重度1例・中等度4例・軽度5例であった。
(考察)優位半球におけるPapezの情動回路の一部を形成している視床前核と帯状回を結ぶ経路や視床背内側核と前頭葉眼窩部を結ぶ経路が侵されることで発動性障害をきたすことは原、三好らにより言われている。左視床出血による発動性障害の合併は歩行自立日数を延長させた。発動性障害は反復した運動学習の機会を減少させ、応用歩行への段階的到達を阻害し、歩行自立を遅延させる要因となることが考えられる。このことから視床出血における左右半球の違いは歩行自立日数に影響を与えることが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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