理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 67
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神経系理学療法
痴呆高齢者における課題遂行時の前頭葉大脳皮質血流量の変化
―光トポグラフィーを用いて―
*近藤 慶承鶯 春夫七條 文雄出葉 淳士
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抄録
【はじめに】
 近年、認知神経科学は種々の分野で注目されている。リハビリテーション分野においても研究が盛んに行われた結果、人間の身体は学習器管であり、さまざまな環境に対して感覚と運動を一体化させ、より環境に適した運動が可能となっていることが分かってきた。そこで今回、一般に適応能力が低いとされている痴呆を有する高齢患者が、環境に対してどのように脳を働かせているのかを知るために脳血流量の変化を調査し、若干の知見が得られたので報告する。

【対  象】
 対象は、当院通所リハビリテーション及び入院の痴呆を有する高齢患者6名(男性1名、女性5名、全員右利き)で、年齢は平均79.3±5.2歳である。痴呆の診断は、全員脳血管性痴呆で、痴呆の程度は、改訂長谷川式簡易知能評価スケールでは平均16.8±5.0点、仮名拾いテストは平均5.2±2.3点である。また、比較対象群は、健常成人19名(男性3名、女性16名、全員右利き)で、年齢は平均30.5±9.6歳である。被験者とその家族には、実験について十分に説明し、同意を得た上で参加の了承を得た。

【方  法】
方法は、両前腕部を机上に置いた安楽坐位にて、右手の示指で閉眼にて触覚識別課題を行わせた。課題の内容は、5種類の粗さの異なるサンドペーパーを確認後、10秒間他動で識別させ、5秒以内に解答させた。課題は15秒毎にランダムに1問出題することとし、5問を1セットとして、1セットごとに60秒間の休息を与え、計3セット施行した。その際、前頭葉の大脳皮質血流量の変化を光トポグラフィー(日立製ETG-4000)にて測定し比較検討した。

【結  果】
 課題の正答率は、痴呆高齢患者群では平均58.9±7.8%、健常者群については平均78.6±8.8%であり、χ2検定にて危険率5%以下で両群間に有意差が認められた。また、光トポグラフィーでの測定の結果、課題開始により両群ともに前頭葉に脳血流量の増加がみられた。課題による前頭葉全体の脳血流の変化量を加算平均した結果、賦活部位や各部における賦活量に差があることが確認された。痴呆高齢患者群は、健常群と比較し、前頭前野の賦活量が少ない傾向があり、左半球の運動前野に高賦活部位が認められた。

【考  察】
今回の結果より、痴呆を有する高齢患者群は、健常者群と比較し課題の正答率が有意に低いことと前頭前野の賦活量が少ない傾向がみられることから、感覚の組織化が不十分であることが推察された。次に、左半球の運動前野に高賦活部位が認められることから、前頭前野の不足している活動をサポートする働きがある可能性が考えられた。以上の2点から痴呆を有する高齢患者は感覚の組織化、すなわち認知活動により努力を必要とすることが示唆された。そして、治療の場面においても感覚の組織化を内在させることで前頭葉の働きをより賦活することが出来る可能性があると考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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