理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 70
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神経系理学療法
足底荷重知覚と足底素材の関係について
*浅海 岩生
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キーワード: 知覚, 荷重, 足底
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抄録

目的)
今回の研究では下肢荷重訓練において床と足底の間に、粗さの異なる素材を置くことにより荷重感覚量を調整し実荷重量がどのように変化するのかを検討した。
方法)
1)被験者;下肢に異常のない健常な男女61名(34.1,SD17.2歳)、男性32名、女性29名である。
2)装置;荷重量の測定にはA&D社のデジタル天秤(FT-100KAI)を用い、荷重量を現すアナログ出力をA/D変換器を用いてパソコンで記録した。
3)測定姿勢;被験者はフォースプレート上に利き足を裸足で乗せもう一方を後方に引いた姿勢で立ち前方の下肢に重心を移動するものとする。
4)荷重方法;被験者の全体重を100%として10%,30%,50%,70%,90%の提示荷重量をランダムに示し被験者の主観で荷重をおこない各層3回測定した。なお測定に先立ち50%の荷重量を15回主観的感覚で荷重練習をした。
5)足底接地素材;粗さの異なるサンドペーパー3種類、JIS規格40(粗さ・大)、100(中)、400(細)とフォースプレートになにも置かない密な表面を用いた。
結果)
1)練習期間について;被験者間のばらつきはかなり認められたが、15回の測定区間全般に50%を中心に平行に推移した。
2)接地素材別での全被験者の実荷重量平均の差異;、接地素材間に差は認められなかった。また提示実荷重量と実荷重量の差を残差として比較した場合も素材間に差は認められなかった。
3)個体内でのデータ比較;実荷重量と感覚量のグラフの勾配と残差を個人別に求め、個人内で素材別にその順位を決定し比較した。勾配については傾きの大きなものを1位とし、残差は一番少ないものを1位とした。勾配は粗さが大きいほど大きくなり密になるに従い傾きが減少する傾向にあり優位に相関を認めた。(p<0.01) また、残差においては素材が粗くなるに従い少なくなり、密になるに従い増加する傾向を示し優位に相関を認めた。
4)性差について;勾配・残差とも各素材間での差異はなかった。
5)年齢と残差の関係;各素材別に年齢と残差の関係を相関分析するといずれも相関係数は低値を示し相関を認めなかった。
考察とまとめ)
 以上より足底荷重感覚は個別差が大きいので平均すると、その差を見出すことが困難であるが個体内での比較では足底接地素材の変化に伴って一定の傾向を示した。荷重感覚は足底の触覚、圧覚、固有感覚、その他の下肢の部位の深部感覚や運動覚など複合的なものであるので、足底荷重感覚を決定する要因は多く個体差が発生しやすくなっているのではないかと思われる。また個人内での荷重感覚変化は粗さが大きくなるに従い感覚の識別は容易となることがわかった。このことは足底感覚の低下症例においての部分荷重学習においては靴の中敷を粗い布素材を使用するなどの工夫をすればより効果的に荷重感覚の学習が可能と考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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