理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 109
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神経系理学療法
立位体幹回旋時における筋活動パターンの筋電図解析
*遠藤 敏裕烏野 大吉崎 邦夫高橋 尚明宇都宮 雅博黒岩 千晴高松 美穂藤原 孝之山本 巌
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抄録

【目的】中枢神経系疾患の理学療法上,リーチ動作や歩行動作などの獲得のためには,体幹の回旋運動の促通は必要不可欠である.しかしながら,動作時の体幹筋における基本的な筋活動に関する研究は少ない.我々は個々の筋活動に合わせた体幹運動療法の基礎資料を作成する目的で,立位体幹回旋時の両側脊柱起立筋の筋活動パターンの分析を行った.
【方法】研究の同意を得た健常成人で既往歴が無く,継続的なスポーツ活動をしていない者を対象者とした.被検者は男性4名(年齢21-23歳),女性3名(21-22歳)の7名であった.測定肢位は膝関節軽度屈曲位,股関節屈曲25度,肩関節屈曲60度,手関節背屈45度の姿勢として,手掌の高さにテーブルを調整した.摩擦抵抗を軽減する目的でタオルを使用して,被検者にはタオルで半円を描く様に,左右にテーブルを拭く動作を1分間繰り返すことを指示した.動作速度はメトロノームの音に合わせて1Hz(slow),1.5Hz(middle)および「できるだけ早く(fast)」の3試行を左右の上肢で行った.筋電位はL 1-2レベルの両側脊柱起立筋(ES),両側大腿直筋中央部(RF)より表面筋電位(sEMG)を導出した.左右への回旋動作はon-offスイッチにて同定して,sEMGは筋電計からA/D変換後に解析ソフトBimutas2に取り込み解析した.解析対象は,測定開始20秒後からの20秒間とした.
【結果】sEMGから左右の律動的な筋活動分析するために2次元プロット解析を用いた.左右の律動的な筋活動が得られれば2次元のX-Y軸上に沿った十字状のプロットが得られ,無関係であれば原点を中心とした円または楕円状のプロットが得られる.左右のESはslowでは全ての被験者で円状,middleでは円状と楕円形,fastでは十字状にプロットされるケースが見られた.両側RFでは3つの動作速度で十字状の2次元プロットを示すケースが多く見られた.
【考察】単純な左右への回旋動作であっても,必ずしも左右交互の律動的な筋活動が行わず,かつ個人差があることが分かった.また動作速度により,ESの筋活動パターンが変化する興味深い知見が得られた.この結果は,経験や日常生活関連動作等により中枢でプリセットされている体幹筋の活動プログラムと,指示された課題動作を制御するために必要な筋活動の差によって生じたと考えられる.我々が体幹回旋を伴う運動療法を行う際,動作速度に検討の余地があることを示唆している.RFの筋活動パターンが交互性示したのは,体幹筋に比較して下肢筋では左右の分離が明確なためであり,ESなどの体幹筋の不十分な回旋運動を補助していることが推察された.

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© 2005 日本理学療法士協会
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