理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 257
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺上肢障害に対するセラピーロボットの使用経験
*大谷 直寛轟 佳代
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抄録
【はじめに】近年、リハビリテーション分野にもロボット技術が応用されている。今回、脳卒中片麻痺患者の上肢障害に対して、ロボットを使用した運動療法を経験したので報告する。
【機器紹介】このロボットはInMotion2と呼ばれマサチューセッツ工科大学で開発された。これは脳卒中などの麻痺側上肢運動機能回復を高めるための革新的な治療法を目指したものである。患者は椅座位をとり、麻痺側上肢でロボットアームのグリップを把持するように前腕を固定される。基本的なトレーニング内容は、モニター画面にある円の中心点から8方向を結ぶポイント間を順に視覚補足しながら、肩と肘関節運動によってロボットアームを水平面上で動かしてリーチする課題である。この運動中には患者の随意運動能力に合わせて、方向のガイドと運動のアシストが適合されている。
【実際の使用】対象はセラピーロボット使用の説明と同意ができた脳卒中片麻痺患者9名である。平均年齢66±14歳。発生からの期間は平均101±69日。上肢のFugl-Meyerスコアは平均27.9±23.9点。ロボットを用いたトレーニングプロトコルを1日40分間、6週間、週6日行った。評価プロトコルとしては円書き、ポイント間移動、抵抗運動などがあり、開始前と3週後、終了後に行った。全ての患者がプロトコルを完了できた。施行による筋骨格系や他の問題は発生しなかった。ガイドとアシストによりリーチ課題は十分な随意性がなくとも遂行できた。
【考察】上肢機能は下肢機能に比べて、より巧緻的で複雑な認知及び運動性が要求される。そのため脳卒中片麻痺上肢の機能回復は下肢に比べ悪く、治療効果も低い。これは脳卒中片麻痺後の上肢治療が運動機能回復を期待する割には量的にも質的にも行われていない事も原因である。文献ではセラピーロボットによって治療効果が認められると報告されており、神経可塑性による神経回路網の再組織化の可能性について述べられている。トレーニング内容は非常に単調な繰り返し動作である。このため実際の導入前では、患者はすぐに飽き、受け入れなくなるだろうと予測していた。しかし、ほとんどの患者がトレーニング期間中、課題に集中し続け、麻痺側上肢の運動と感覚を意識し続けていることは驚きだった。長所は長時間、同一の運動を頻回に繰り返し行うことで、同一の感覚運動経験の機会を多く持てることである。麻痺側上肢への注意と認知を促せることは損傷した脳機能にとって非常に重要な意味を持つと思われる。運用面からは、ロボットには人手が要らない自動化を想像する。しかし患者の運動方法の理解や運動遂行時の姿勢の問題、代償運動の発生など、セラピストによる適切な指示や誘導が必要であった。また、評価プロトコルは上肢機能を測る上での指標になると考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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