理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 256
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神経系理学療法
失行・失語を呈した脳卒中右片麻痺患者への知覚課題の導入
*猪飼 裕加山手 千里池田 悦子
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抄録
【はじめに】現在,失行症の病態は依然として不明であり,定義や有効なアプローチ方法が確立されていない.今回,失行・失語を合併した脳卒中右片麻痺患者に対して,模倣課題を行い,若干の効果が得られたので報告する.
【症例紹介】症例は,H15年9月9日クモ膜下出血・左側頭葉に血腫を認め,同日クリッピング術・血腫除去術を施行した70歳の女性である.同年10月7日リハビリ目的にて当院へ入院となる.初期評価時,重度の失語症を呈しており理解・表出共に低下が認められた.また,観念・観念運動失行(歯磨き動作時誤操作・模倣困難)も認められた.麻痺側への視野狭窄及び表在・深部感覚共に重度鈍麻が認められ麻痺側の認識力が低下していた.Br-stageは右上肢2・右手指2・右下肢2-3であり膝屈筋の筋緊張亢進が認められた.立ち上がりは軽介助であるが非麻痺側優位で行っており,麻痺側には連合反応が出現し,麻痺側足底部の接地が困難であった.
【経過】10月9日よりリハ開始し,麻痺側下肢随意性向上訓練,立ち上がり訓練,歩行訓練を行なった.しかし,依然として連合反応は出現し,立ち上がり困難であった.また模倣障害も認められていた.そこで,動作中心から足底に対するアプローチへ変更した.10月31日より,足底感覚入力,単軸不安定板にて底背屈を他動的に施行した.2週間後,理解力,麻痺側への注意力の向上がみられてきた為,両足部に単軸不安定板を用い底背屈の模倣課題を施行し,開眼から閉眼へ移行した.3週間後,正中位での静止立位が可能となり,立位でステップ訓練を非麻痺側から麻痺側へ移行し,その後,四点杖歩行を施行した.
【結果】動作中心のアプローチ時は,連合反応が出現し足底接地が困難であった.その為,足底に対してアプローチを行なったところ,連合反応が軽減し足底接地が可能となった.当初は麻痺側への荷重も困難であったが,足底接地が可能となった後2週間で麻痺側荷重量は15Kg,3週間後は23Kgで正中位保持が可能となり,最大荷重量は30Kgとなった.3ヶ月後には四点杖歩行近位監視レベルとなり,10m歩行が1分25秒,48歩となった.
【考察】行為処理モデルは,入力経路が異なっても出力経路は同一とされており,適切な入力経路を選択することが必要と言われている.本症例は,重度失語・失行の影響により,言語入力,物体入力が困難であり,模倣である視覚・ジェスチャー入力の反応が前者2つに比べ最も良好であった為模倣課題を選択した.模倣課題施行後から,指示なしでも非麻痺側の運動を麻痺側にて模倣するような動作が獲得された.本症例において,適切な入力経路を選択し介入したことにより,足底の感覚情報に注意を向ける事が可能となり,姿勢制御能力が向上し歩行へつながったと示唆される.
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© 2005 日本理学療法士協会
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