理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 266
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神経系理学療法
重度四肢麻痺児に対する乳児期からの椅子座位設定の効果について
*剱物 充岩倉 正樹小泉 益朗
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抄録
【はじめに】重度四肢麻痺児では、将来の車椅子移乗などのADLを想定して関節拘縮など二次的障害の悪化防止が課題の1つとなる。当院では乳児期以降の重症例に対し椅子座位設定を検討し、適応が認められるとウレタン椅子を製作し姿勢管理を行っている。この度、当院新生児医療センターにて理学療法(以下PT)を開始した2症例を通してその効果を検討したので報告する。
【症例1】診断名:多発奇形症候群。在胎40週4日、体重2930gで出生、生後21日目より人工呼吸器装着下でPT開始。四肢の自発運動はみられず、両側肘関節・膝関節伸展拘縮、両側足部尖足と同時に四肢の過敏性が存在し、手足などの遠位部を触れるだけで足クローヌスや全身の突発的な過緊張が出現する状況であった。しかし横抱きの際はこれらの症状が緩和されたことから、生後5ヶ月よりウレタン椅子を製作しPTや日常生活に取り入れた。椅子座位姿勢により四肢の過敏性が徐々に減少し、前述の拘縮に改善がみられた。
【症例2】診断名:極低出生体重児、低酸素性虚血性脳症、脳室内出血後水頭症。在胎30週4日、体重1144gで出生。生後5ヶ月よりPT開始。コット上では頸部から体幹が著しく反り返り、全身は両側肩甲帯後退、両側肘関節屈曲位、両側手指屈曲位、両側下肢伸展・内転位で過緊張を呈し、おむつ換えや手遊び介助などに支障をきたしていた。また精神面でも過敏で、緊張した表情や興奮状態などをなだめることに時間を要した。しかし生後6ヶ月の時点よりウレタン椅子に移乗させると、徐々に「手‐口」など探索活動の介助が容易となり、両側下肢では伸展位での過緊張状態が緩和された。更に表情も落ち着き、前述の肢位での拘縮発生の危険から回避できた。
【考察】Andersonらによれば、直接の身体介入のない時間を過ごす際の感覚入力の為にポジショニングが重要で、児が成長した場合には椅子が適応になるとしている。重症児においても椅子座位姿勢によって四肢の緊張が変化する要因の1つとして、抱きかかえや揺らしで得られる固有感覚や前庭刺激入力に近い効果が作用し、四肢の筋緊張の変化に関与するのではないかと考えられる。一方Bryceによれば、下肢の伸筋痙性減少の為に下肢の屈曲パターンのみが利用されると、上部体幹の痙性との結合により、体幹を通して屈筋痙性を増加する危険性があり、手指の屈筋痙性も含め全体的なパターンの中和がもたらされるには、四肢の伸展・外転を伴った脊柱の伸展が重要であるとしている。この点からいえば、座位姿勢によって、例えば下肢の伸展パターンに対する屈曲姿勢という単一の反射抑制肢位として作用するのみではなく、四肢の活動に必要な体幹の伸展活動が介助されることが関与するのではないかと考えられる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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