理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 268
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神経系理学療法
喉頭全摘出した重度脳性麻痺児に対するボツリヌス菌治療報告
*久保 温子坂口 雅子原 寛道伊藤 由美
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抄録
【はじめに】重度の脳性麻痺の子どもさんのリハビリテーションを進めていく上で大きな問題となるものに筋緊張のコントロールがある。今回筋緊張による斜頸・側弯改善、進行予防を目的にボツリヌス菌(BTX)治療を行った重度脳性麻痺症例を経験したので報告する。
【対象と方法】養護学校4年生男児。脳性麻痺、てんかん、両側麻痺性股関節脱臼、麻痺性脊柱左凸側弯症。GMFCS Vレベル。知的レベルは母親の呼びかけにわずかに反応出来る程度。呼吸状態悪化から平成14年10月喉頭全摘出術施行(詳細は平成15年九州PT・OT合同学会にて発表)、逆流現象悪化から平成15年10月胃瘻造設。また1年で10センチ以上、身長が伸び側弯も急速に進行。平成16年6月非麻酔下BTX頸部30単位・腰部60単位投与を医師が実施した。
【治療経過】(治療前)Cobb角75度(筋緊張により矯正困難)。頭頚部右回旋・伸展方向への押しつけにより右耳に褥瘡が出来やすかった。胃瘻造設後も逆流現象や胃瘻部からの漏れも極端に多く更衣が頻回に必要であった。右側臥位・仰臥位以外の姿勢をとることがセラピスト以外には難しく時間がかかった。筋緊張による反り返りから介助者の抱っこの負担も大きかった。(治療後)Cobb角70度(矯正54度)へ改善。自然臥床で身長1.5センチの伸び。頭頚部の押しつけが減少し、褥瘡治癒。逆流現象や胃瘻部からの漏れはほとんどない。姿勢は左側臥位などが誰にでも簡単に行え、抱っこが左右どちらからの介助でも楽に行えるようになった。
【考察】BTX注射とはA型ボツリヌス毒素を有効成分とし、末梢の神経筋接合部における神経筋伝達を阻害することにより筋痙攣および緊張を改善するものである。今回、重度の症例でもあり副作用の影響も懸念されたが本症例では認められなかった。施行後、脊柱の可動域の改善、逆流現象減少などの医療面での改善が得られた。また筋緊張の緩和で楽に姿勢を変えられるようになり、リハビリテーション場面だけでなく、学校での療育の幅も拡がっている。効果判定は本人の意思伝達が困難であること、筋緊張以外の問題も合わせ持つことから既存評価表だけでは難しく今後さらに検討が必要である。しかし、今回は日常頻回に行われる抱っこや、胃瘻部からの漏れ減少など目に見えた変化が大きかった為、ご家族にも分かり易く、高い満足度が得られた。現在4カ月が経過し、胃瘻部の漏れが少しずつ見られる。効果の持続性を評価しながら次回の施行を検討しなければならない。重度脳性麻痺児における筋緊張は、生活を大きく制限するだけでなく、生命の危険に直結する問題である。喉頭全摘出術と共にBTX治療がリハビリテーションの準備医療として効果のあったケースといえる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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