理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 276
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神経系理学療法
急性期脳梗塞における早期立位が半側空間無視に及ぼす影響
*山道 和美河島 英夫山田 浩二新谷 大輔三山 奈穂子井元 香内田 奈々石原 靖之関原 康司河波 恭弘
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抄録

【目的】半側空間無視(USN)が脳卒中患者のADL阻害因子になることは周知である。我々は急性期脳卒中において覚醒水準、全身機能向上、臥床関連合併症予防の目的で早期より坐位、立位を積極的に行なっている。今回、早期立位が急性期脳梗塞におけるUSNに及ぼす影響を調査した。

【対象】2003年5月から2004年4月まで当院に入院した発症5日以内の初回脳梗塞症例で、理学療法(PT)依頼があったのは472例であった。その内、初回評価時に当院で作成した評価シートを用いてUSNを認めた53例中、意識障害、失語などにより検査不能であった12例を除く41例(平均年齢77.5±9.3歳、平均在院日数18.1±6.7日)を対象とした。

【方法】初回評価から1週間毎にUSN状況を評価し、当院転院(退院)の時点でUSNの有無により2群化した。USNは11項目中、1項目以上存在していれば残存、全項目消失しているものを消失とした。入院時・転院(退院)時Japan Coma Scale、入院時・10日目National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)、座位開始までの日数、立位練習の有無と開始時期を診療録より後方視的に調査した。統計学的分析にはχ2検定、t検定、Mann-WhitneyのU検定を用いて、有意水準を0.05未満とした。

【結果】USN出現率は8.6%であった。評価可能であった41例中、当院から転院(退院)するまでに完全に消失した症例は10例(24.4%)、残存した症例は31例(75.6%)であった。立位練習の有無に関して、立位を行なったのは消失群10例中10例(100%)、残存群では31例中21例(67.7%)であり有意差を認めた (p=0.039)。立位をとっていない原因は、麻痺が重度、肺炎などの合併症によるものであった。入院時NIHSSでは、消失群11.0±6.5点、残存群13.8±4.1点で全身状態に差は無かったが、10日目NIHSSでは、消失群5.1±4.3点、残存群11.6±5.3点と消失群が有意に軽症になっており(p=0.001)、入院時と10日目の改善状態を比較すると消失群が有意に改善していた(P=0.038)。その他の項目に関して、有意差を認めなかった。

【考察】前島らは、USNは左右の方向性を持たない全般的注意レベルの問題である非空間性要因が多くに作用しているとしており、感覚系のフィードバックを目的とする感覚覚醒訓練を推奨している。当院ではクリニカルパスを使用して脳梗塞症例で発症3日から5日で坐位、その後立位練習を行っている。早期立位は非空間性要因へのアプローチとして急性期PTでは有効に作用していると考える。今後は、残存例に対する急性期からの効果的理学療法について検討課題としたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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