理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 275
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神経系理学療法
脳卒中後のうつ状態
―回復期病棟におけるSDSとADLとの関連―
*杉浦 令人村田 元徳江島 幸子杉山 まなみ(OT)篠田 里奈(OT)石川 敦子(OT)高橋 理夏
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抄録

【目的】脳卒中患者のリハビリテーションの過程では様々な阻害因子が存在する。その中で脳卒中後うつ状態は出現頻度が高く、重要な因子の一つである。今回、当院回復期病棟入院の脳卒中患者の中で、うつ状態にある患者に見られる傾向を検討したので報告する。
【対象】対象は、2003年6月~2004年8月までの間に当院回復期病棟入院中に理学療法を受けた初発脳卒中患者の115名のうち、失語症、痴呆疑いのある者及び精神疾患既往のある者55名を除外した60名(男性33名、女性27名、年齢67.2±9.3歳、発症から当院入院までの期間37.4±15.0日)である。内訳は、脳梗塞36名、脳出血16名、脳幹梗塞7名、くも膜下出血1名であり、右片麻痺32名、左片麻痺27名、両麻痺1名であった。
【方法】対象者60名に対し、当院臨床心理士がZungの抑うつスケール(Self-rating Depression Scale:以下、SDS)を用いて初期評価時に事前に調査内容の同意を得、全項目を任意回答とし、直接面接法にてうつ状態の評価を行った。SDS得点が50点以上をA群(うつ状態)、39~49点をB群(境界群)、38点以下をC群(非うつ状態)とした。3群間において性別、年齢、発症から当院入院までの期間、麻痺側運動機能、ADL能力について検討した。麻痺側運動機能はBrunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)、ADLは機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下、FIM)にて評価した。
【結果】60名中A群8名(13.3%)、B群24名(40%)、C群28名(46.7%)であり、対象者の13.3%にうつ状態を認めた。性別では男性の占める割合はA群50%、B群45.8%、C群64.3%であった。年齢はA群66.0±7.9歳、B群64.5±9.1歳、C群69.6±9.3歳であった。発症から当院入院までの期間はA群44.8±19.2日、B群40.4±15.2日、C群32.6±12.1日であった。BRSでは上肢A群3.3±1.5、B群3.8±1.4、C群4.2±1.5、下肢A群3.5±1.5、B群4.5±1.5、C群4.5±1.2であった。FIM運動項目合計はA群56.4±20.2点、B群66.4±16.6点、C群67.9±11.9点、認知項目合計はA群27.9±10.4点、B群31.1±6.2点、C群33.2±3.7点であった。
【考察】今回、対象60名中8名(13.3%)にうつ状態を認めた。初期の結果からはうつ状態を呈する患者と非うつ状態の患者との間では、発症からの期間が長い程、うつの割合が高い傾向にあったが、運動機能、ADL能力は関係がなかった。経時的な入院リハによるADL能力とSDS得点との関係について、さらに検討を加え報告する。

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© 2005 日本理学療法士協会
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