理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 860
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神経系理学療法
脳性麻痺の病型別歩行予後
―座位・四つ這い・歩行獲得時期の調査―
*大原 ともみ並河 孝本白水 博平田 順一松尾 洋史西山 直樹柴田 奈緒美辻村 源司郎槻本 康人大谷 淳鈴木 順子
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キーワード: 脳性麻痺, 歩行予後, 病型別
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抄録
【目的】本研究では、脳性麻痺(CP)児の歩行獲得年齢を含めた病型別の歩行予後を予測することを目的に、CP児430名について後方視的調査を行い、CP病型別歩行能力と獲得月齢、座位や四つ這い獲得時期と歩行獲得との関連性や歩行阻害因子について検討した。
【対象】1977年~1996年度の20年間に出生し、滋賀県に在住で、滋賀県下の病院や施設にてフォローしているCP児、430名。
【方法】滋賀県下でCPの診断や治療に携わる医師や理学療法士の情報でカルテ記載に基づき、 (1)CP病型(2)歩行能力a.独歩群(屋外歩行・屋内歩行)b.補助歩行群(歩行器・杖使用)c.歩行不可群(3)独歩獲得月齢(4)座位獲得月齢(5)四つ這い獲得月齢(6)てんかんの有無(7)知的発達を調査した。統計学的検討は、Spearmanの順位相関係数、χ2検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果と考察】CP430名のうち254名(59%)は、歩行可能(a・b群)であった。a群は229名で、うち207名は屋外歩行、22名は屋内歩行あった。b群は22名、うち8名が杖歩行、17名が歩行器使用者であった。CP430名の病型は、両麻痺165名、四肢麻痺125名、片麻痺82名、アテトーゼ33名、失調25名で、歩行可能(a・b群)なものは、片麻痺の99%、失調96%、両麻痺80%、アテトーゼ52%で、四肢麻痺は全例が歩行困難(c群)であった。a群の中で屋外歩行を獲得したCPの独歩獲得平均月齢、独歩獲得最年少、独歩獲得最年長を病型別でみると、片麻痺(21.5±9.2ヵ月・12ヶ月・56ヶ月)、両麻痺(36.6±19.2ヶ月・13ヶ月・84ヶ月)失調(40.8±18.6ヶ月・19ヶ月・84ヶ月)、アテトーゼ(49.6±26.0ヵ月・19ヵ月・90ヶ月)であった。a群のなかで屋外歩行を獲得し、四つ這いおよび座位の獲得時期の明確な157名に関して、屋外歩行と四つ這い、および屋外歩行と座位にはそれぞれ有意な正の相関を認めた(各々p<0.0001)。2歳までに四つ這いを獲得したCPは全例がa群、2歳までに座位を獲得したCPは97%がa群で、2歳までに四つ這い獲得した場合、および2歳までに座位獲得した場合は独歩予後が良かった(各々p<0.0001)。てんかん合併は187名(43%)にみられ、うち129名(68%)がc群で、歩行不可群にてんかん合併は多かった(p<0.0001)。重度知的障害の合併は129名(30%)で、うち113名(88%)がc群で、歩行不可群に重度知的障害の合併が多かった(p<0.0001)。CP病型別での歩行能力や歩行獲得年齢、歩行予後に関わる要因や阻害因子などについて報告したが、今後ともあらゆる観点から歩行予後を明らかにする必要があると思われる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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