抄録
【はじめに】Hand-held Dynamometer(以下HHD)による筋力測定は、高い再現性があるとの報告が多い。しかしその測定誤差を検討した報告は少ない。今回、脳卒中患者を対象とし、HHDによる等尺性膝伸展筋力測定の検者内・検者間再現性を、測定誤差の観点から検討した。また、分析においては一般化可能性理論を適用し、様々な測定条件における測定誤差を求め、適切な測定計画立案のための情報提供を行った。
【対象及び方法】対象は、Brunnstrom recovery stage III以上の脳卒中患者26名(男19、女7名)である。検者は、男性理学療法士2名(A・B)で、HHDはアニマ社製μTas MF-01を使用した。方法は、検者Aが被検者患側肢の等尺性膝伸展筋力を2回測定し、これを第1セッションとした。その後1時間以上の休憩を挟んで、検者B、検者Aの順で同じく2回ずつ測定し、これを第2セッションとした。測定結果は第2セッション終了時まで、被検者および検者にブラインドした。測定肢位及び細則は、当院で考案したHHD測定マニュアルに従った。
【分析方法】まず一般化可能性研究(以下G研究)として、検者内はセッションと反復、検者間は検者と反復を相とする2相完全クロス計画の下、主効果および交互作用の分散成分推定値を求めた。この情報を基に決定研究(以下D研究)を行い、4つの測定条件での測定の標準誤差standard error of measurement(以下SEM)を求めた。
【結果】G研究の結果、各変動要因の分散成分推定値は、検者内で主効果の反復が2.64%、交互作用の被検者×セッションが46.88%、セッション×反復が2.15%、残差が48.34%であった。検者間では、交互作用の被検者×検者が35.84%、検者×反復が2.67%、残差が61.49%であった。D研究の結果、検者内における4つの測定条件でのSEMは、1セッション1回測定値で1.84kg、3回測定の平均値で1.48kg、2セッション1回測定の平均値で1.32kg、3回測定の平均値で1.06kgであった。検者間では、1検者1回測定値で2.34kg、3回測定の平均値で1.77kg、2検者1回測定の平均値で1.65kg、3回測定の平均値で1.25kgであった。
【考察】一般化可能性理論の適用により、G研究では測定誤差の原因の所在やその大きさを推定することができる。検者内では、一般的傾向として2回の反復測定が一定していない(1回目<2回目)が、このことが測定誤差に及ぼす影響は小さい(2.64%)ことがわかる。また、検者内・検者間での交互作用から、検者Aのセッション1の2回目に比較的大きな筋力を発揮する被検者が多い傾向がみられ、このときの測定方法・状況に改善の必要があることがわかる。D研究では、様々な測定条件でのSEMを知ることができ、様々な臨床場面や患者の筋力変化に適した測定条件を知る判断材料となる。