抄録
【はじめに】当園入所の重症心身障害児・者(以下、重症児・者)では、例年数件の骨折が認められ、骨の脆弱性がその一因であると予測される。そこで、入所者の骨組織の状態を簡便に評価するため、骨密度を測定し検討したので報告する。
【対象】当園入所の重症児・者168名中、体調不良・拒絶などの理由により測定不可能であった7名を除く161名(男性94名・女性67名、大島の分類1~12・17、超重症児・者19名)。平均年齢33.9±13.3歳(5~72歳)。
【方法】(1)超音波踵骨測定装置(A-1000 EXPRESS、GE Lunar社製)を使用し骨密度を測定。骨密度は、超音波骨密度指数である‘スティフネス指数’(以下、指数)で表示。(2)当園アクシデントレポート(H14.2から2年間)より骨折に関するデータを集計、骨密度との比較・検討を行った。
【結果】指数の平均は全体で42.6±15.2(男性45.4±15.0、女性38.6±14.7)。移動能力別では、寝たきり36.1±14.9、座れる39.5±11.9、歩行障害47.8±10.6、歩く57.9±13.9、走る55.7±7.7。超重症児・者の平均は27.2±10.2。抗てんかん剤服用状況別の平均は、服用者41.1±14.8、非服用者50.3±15.1。以下の比較において有意差は認められなかったが、(1)男性に比べ女性の方が指数は低い、(2)移動能力が低い程指数は低い、(3)重症児・者に比べ超重症児・者の方が指数は低い、(4)抗てんかん剤非服用者に比べ服用者の方が指数は低い、(5)年齢が高い程指数は低い(移動能力別)、という傾向が認められた。また、骨折既往は17名(動く重症児・者13名)に認められ、発生部位は手指・足趾が12名で最も多かった。骨折既往別の指数の平均は、骨折者が39.5±9.2、非骨折者が42.3±15.3で、骨折既往の有無と指数の関係は認められなかった。
【考察】今回測定した指数は、先行研究の健常男性平均88.0±16.2、女性平均88.3±13.5と比較すると全体的に低く、各年代ともに同年代の健常平均と比較すると40~70%程度であった。また、先行研究では重症児・者の骨折は寝たきりレベルの大腿骨に多く、低運動量・抗てんかん剤の長期服用・栄養や代謝の障害が骨密度の低さの要因として挙げられている。今回の結果でも低運動量・抗てんかん剤の服用に関しては同様の傾向が見られ重症度が高い程骨密度は低いと考えられたが、骨折発生者・部位に関しては異なり、動く重症児・者の四肢末梢に多く認められた。動く重症児・者における骨折発生要因は大きく個体要因と環境要因(他利用者含む)に分けられ、骨密度の低さは個体要因の1つであると予測された。他の個体要因として、運動機能の低さ・周囲への注意の乏しさ・行動上の問題等が考えられ、さらにこれらは他利用者にも同様に存在するため、環境要因にも含まれると考えられたことから、今後は各要因についての検討が必要と考えられた。