抄録
【目的】我々は膝前十字靭帯(ACL)損傷の予防法について検討している。これまでACL損傷の発生状況に関しては多くの分析と報告がなされてきたが、左膝関節で損傷が多いとするいわゆるlateralization(左右の側性)の存在は興味のあるテーマである。本研究では、自験データを整理し、文献からの情報を踏まえ、スポーツ種目別でこのようなlateralizationが明らかになるのかを確認する。
【方法】H大学病院にH11年1月よりH16年10月までに受診し、ACL再建術を受けた368名(男性179名、女性189名)を対象とした。リハビリテーション診療記録から受傷した際のスポーツ種目と受傷側を調査した。両膝の損傷は除外した。これらの結果と、Medlineから入手可能であった1995年以降の文献などで調査内容と一致していたものについて発生状況を比較した。
【結果】368名中、左ACL損傷が209名(57%)、右ACL損傷が159名(43%)であった。男性179名中101名(56%)が左ACL損傷、女性189名中108名(57%)が左ACL損傷であり、男女とも左ACL損傷の発生率が有意に高かった(p<0.05、p<0.01)。左右の発生率に男女差はなかった。スポーツ種目別ではスキー(22%)、バスケットボール(19%)、バレーボール(17%)、サッカー(13%)、柔道(6%)、野球(5%)、ハンドボール(3%)の順に多く発生していた。スポーツ種目別の受傷側は、ハンドボール(90%)、バレーボール(65%)において左ACL損傷が際立って多く発生していた。女子バレーボールの左ACL損傷の発生率が男子よりさらに高い傾向にあった(女子66%、男子54%)。
【考察】今回の結果から、自験データ368名の分析では左ACL損傷が多いことが確認できた。スポーツ種目別にみると、いくつかの種目で左ACL損傷の発生率が有意に高く、lateralizationの存在が確認された。今後、バレーボールを含めて、スポーツ種目によって左ACL損傷が多く発生する理由を明らかすることが、ACL損傷の予防につながっていくと考える。Salciら(2004)はバレーボール選手に対して2種類の高さからの着地動作を行わせ、運動学的、筋力的に男女差があると報告している。今後はこれらを参考にするとともに、なぜ左ACL損傷の発生率が高いのかを決定する因子について追及したい。さらにMedlineより入手した文献のデータを比較して報告する。
【まとめ】スポーツ種目によるlateralizationを分析することがACL損傷予防に役立つと考える。