理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 11
会議情報

骨・関節系理学療法
膝前十字靭帯再建術後の追跡調査
―アンケート調査による報告 第1報―
*唐沢 和彦今野 敬貴奥平 裕子金城 拓人赤井 寛之半田 学中川 和昌
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抄録
【目的】これまで当院では提携病院と協力してスポーツ選手(愛好家)の膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後の理学療法を実施してきた.しかし,当院が提携病院から遠方ということもあり退院後の状況を把握することが困難であった.我々はアンケートによる追跡を行う事で1)現在のスポーツ活動2)術式による相違点を調査・検討した.その結果,多少の知見と今後の課題を得たので報告する.
【対象と方法】ACL再建後に当院にて理学療法を実施(平成15年4月1日~12月31日)した内,スポーツを行っていた35人に対してアンケートを送付した.内容は,1)現在のスポーツ活動状況,2)日常生活動作(以下ADL)レベル,3)膝の状態,4)手術に対する満足度を質問した.方法は無記名選択式(一部記述)とした.有効回答数は18人(回収率51%)であり,それを対象者として再建方法により2群に分類した.A群は腸脛靭帯+人工靭帯(以下ITB)にて再建(術後12.1ヶ月±2.9)した10名(男:6人,女:4人)である.B群は半腱様筋+薄筋(以下STG)にて再建(術後:13.1ヶ月±2.7ヶ月)した8名(男:5人,女:3人)とした.
【結果】全体として,スポーツ活動可能な者は13人であった.その内,受傷前と同レベルの活動が可能なのは6人,レベルは下がったが,活動可能なのは7人であった.活動困難な者は5名であった.その中の2名はシーズンオフによる未実施であり,2名は他部位の受傷により活動困難な状態であった.残り1名は年齢の影響で競技を引退している.また術式にて分類した場合,1)受傷前と同レベルの活動可能がA群3人,B群3人であった.レベルが下がった者はA群4人,B群3人であった.2)正座・和式トイレといった膝の深屈曲角度が必要な動作にてA群6人,B群4人に困難の訴えがあった.3)症状はA群(B群),不安感:3人(4人)違和感:4人(3人)ひっかかり感:2人(2人)特になし:3人(3人)であった.4)満足度はA群(B群):満足・やや満足が8人(6人),不満・やや不満が2人(2人)であった.いずれの結果も著明な相違は無く,術式における特異性は見られなかった.
【まとめ】今回,術後8~16ヶ月経過している対象者に対してアンケートを行った.術後期間から検討すると,現在のスポーツ活動状況は比較的良好と考えられた.しかし,深屈曲位を必要とするADL困難や,膝の不具合の訴えが散見されたが,術後期間が経過するとともに状態は改善する傾向が見られた.今回,十分な回収率が得られなかった事から今後調査方法の再検討の必要性が示唆された.その上で,今後スポーツ活動が本格化する事により両群間に格差が出現する可能性もあると思われるので,継続した調査・検討を行っていく必要があると考えられた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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