抄録
【はじめに】
膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後患者の術後成績に関する報告は数多くみられる。術前筋力と術後筋力の関係についての報告は散見されるが、経時的に調査した報告や、手術時期が筋力に及ぼす影響を報告したものは少ない。
今回、我々は手術の時期が術前および術後筋力に与える影響について調べた。
【対象および方法】
対象は当院にて平成13年より平成16年の間にACL再建術(自家半腱様筋二重束)を受け、当院にて術後早期のリハビリテーションを受けた患者17名(男性11名、女性6名)17膝とした。
受傷より手術までの日数を記録した。また、術前および術後評価として等速度筋力測定器(酒井医療社製Biodex system3)を使用し、膝屈曲・伸展筋力の測定を行った。測定方法は、術前及び術後6ヶ月の測定で角速度60deg/secにて、膝関節角度は0°~100°まで等速性求心性運動を測定し、その中で最も高い最大トルク値(Nm)をデータとして用いた。術後3ヶ月の測定では、再建靭帯への影響を考慮し180deg/secにて測定した。以上より得られたトルク値より被検者の体重で除した値を使用した。データ処理はStatViewを使用し、受傷より手術までの期間および術前・術後の膝伸展筋力について、それぞれの項目の相関をみた。
【結果】
膝伸展筋力に関しては、受傷から手術までの期間と、術前・術後3ヶ月・術後6ヶ月の筋力に有意な正の相関がみられた(p<0.05)。また、術前と術後6ヶ月の筋力にそれぞれ有意な正の相関を認めた(p<0.05)。術前と術後3ヶ月の筋力に相関はみられたが、統計学的優位さはみられなかった。さらに屈曲筋力に関しては、受傷から手術までの時期と、それぞれの筋力に相関はみられなかった。また、術前筋力と術後6ヶ月の筋力の間に有意な相関がみられた(p<0.05)。
【考察】
今回、我々は膝伸展筋力に関して、術前筋力と術後筋力の関係を示した。さらに、手術時期が術後筋力に影響を与える可能性も示した。これらの結果は先行研究の内容とほぼ一致している。しかし、今回の結果は、実際のスポーツ選手の復帰を考慮したとき、必ずしも早期スポーツ復帰に意味をもたらしているものとはいえない。逆に、手術時期の遅延を促すものとも捉えられる。一方、術前の筋力は術後の筋力の回復のひとつの要因となることが示唆された。以上より、術後筋力の回復をスポーツ復帰のひとつの指標と考えれば、選手が早期のスポーツ復帰を目指すためには、受傷後早期からの医学的管理や術前および術後の安全かつ効果的な筋力増強プログラムを考慮する必要があると考えられる。今回の報告では症例数が少なく、いくつかの傾向を示したに過ぎないと言わざるを得ない。今後はさらなる症例数の増加と復帰時期に与える因子などを模索しつつ調査、検討していきたい。