抄録
【はじめに】高齢者が歩行能力低下を来すには多くの要因があるが、その一つに足関節機能の関与は重要であるといえる。しかし、変形性膝関節症(以後、膝OA)については膝周囲筋力に関係した報告が散見される。今回、膝OAに対するTKA術前術後の足関節機能の中で特に足関節底屈筋力に着目し、その測定方法及び歩行との関係を検討したので報告する。
【対象】膝OA15名30膝、全て女性、平均年齢70.5±5.8歳、平均体重58.7±6.9kg、平均身長151.0±6.2cm。膝OA進行度は中期から末期、全て両膝内側型、両側TKA6例、片側TKA9例であり、TKA使用機種は全てWRIGHT社製ADVANCEであった。膝以外の部位に明らかな骨関節疾患を呈しない者とした。対象者には十分説明し同意を得た。
【方法】測定項目:筋力(膝伸筋力、膝屈筋力、足底屈筋力)、10m最大努力歩行時間と歩数、膝疼痛(VAS)、日整会変形性膝関節症判定基準(JOAscore)。測定方法:術前と杖無し屋外歩行が可能になった時期(以後、術後)に測定した。膝伸筋及び屈筋力は膝90°屈曲位にて徒手筋力計を用い測定した。足底屈筋力はtilt table足底部に市販の体重計を固定し、背臥位にて膝関節伸展位足関節10°底屈位で体幹を固定し等尺性収縮でその最大値を測定した。筋力は各々左右2回ずつ測定し、左右最大値合計を求めトルク値(Nm)で記した。10m歩行は最大努力歩行時間(杖なし)と歩数を測定し、歩行能力として速度(m/min)、step length(m)、cadence(歩/min)を算出した。VASは左右合計値とした。分析:術前における各値の相関性、術後における各値の相関性、術前と術後の各値と関係を各々危険率5%で行った。又、市販体重計使用による再現性の検討は級内相関係数を用いた。
【結果】足関節底屈筋力の級内相関係数はr=0.951,P<0.01で有意な再現性が認められた。足底屈筋力は術前・後ともに歩行能力と有意な相関(術前において速度とr=0.80,P<0.01、術後はr=0.74,P<0.01)を示し、膝伸筋力は術後歩行能力と有意な相関(速度とr=0.74,P<0.01)があった。JOAscore及びVASは術前において歩行能力と有意な相関であった。術前から術後における各値は、歩行速度は63.0が74.1(m/min)、step lengthは0.5が0.6(m)、 cadenceは117.2が127.3(歩/min)、VASは10.2が3.3(cm)、膝伸筋力は93.9が99.6(Nm)、膝屈筋力は42.6が47.9(Nm) 足底屈筋力は63.9が74.0(Nm)、JOAscoreは58.6が78.3(点)であり、膝伸筋力以外に有意な差があった(P<0.01)。
【考察】植松らは高齢者にみられた足底屈モーメントの歩行速度、歩幅との密接な関係は高齢者歩行運動における下肢機能の役割、中でも蹴り出し期における力強い足底屈動作の重要性を示唆しており、膝OAにおけるTKA術前術後においても同様と考えられた。又、市販の体重計を用い足関節底屈筋力から歩行能力を予測できる1つの方法としてその測定方法は再現性及び信頼性の高いものであり有用であった。