抄録
【はじめに】
我々は、臨床の場においてしばしばステップ肢位でのエクササイズを取り入れたアプローチを行うことがある。その目的は、大別すると筋の促通・安定性向上・筋力強化などが挙げられる。そこで今回、膝関節に着目し、ステップ側の膝関節に対し多方向からの抵抗を加えた。その際、膝関節周囲の筋活動を計測し、本エクササイズでの効果を検討した。
【対象と方法】
対象は同意の得られた健常成人5名(男3名、女2名)を対象とした。年齢は平均23.4歳(±2.1歳)、身長は平均165.6cm(±6.4cm)、体重は平均57.8kg(±9.1kg)であった。
方法は右足を前方へステップさせ、膝関節軽度屈曲位とした。上肢は体側へ下垂、体幹正中位を保持するよう指示し、視線は前方注視とした。足部の位置が歩幅35cm、歩隔15cm、足部外転25゜になるように体重計を設置した。その上で右下肢への荷重が体重の1/2となるようにしてのせた。抵抗は脛骨近位端に1)前方 2)後方 3)外側 4)内側 5)前外側 6)後内側 7)後外側 8)前内側の8方向に加えた。抵抗量は9kgとした。その際の4筋(半腱様筋・大腿二頭筋長頭・内側広筋・大腿直筋)の活動を筋電図計(Nicolet社製Viking Quest)を用いて計測した。導出法は双極導出で電極間距離を1cmとし、筋線維へ平行に電極を配置し筋電図を記録した。また、4筋の9)等尺性最大収縮を計測し、9)に対する1)~8)の%IEMGを算出した。
【結果と考察】
前方への抵抗に対しては内側広筋が、後方への抵抗に対しては、半腱様筋の活動が優位であった。矢状面における内側広筋と半腱様筋の活動が、膝関節屈伸のコントロールに関わる。これは、構造上正常な運動方向であり、前後のバランスは単関節筋である内側広筋と、膝屈筋群の中でも半腱様筋が制御しているものと考えられる。
外側への抵抗に対しては、大腿二頭筋が、内側への抵抗に対しては、大腿直筋の活動が優位であった。前額面での内外側への抵抗に対して、膝関節では筋の走行から靱帯での制御が大きいとされている。そのため、抵抗が加わったときに股関節や下腿の回旋要素が加わるため、その制御として二関節筋である大腿直筋と、膝屈筋群の中でも大腿二頭筋によって制御しているものと考えられる。
また、同じ膝関節伸筋・屈筋であっても、その活動は同等ではなかった。さらに、どの方向の運動に対しても拮抗筋が同時収縮している事が示唆された。
大川と山岸らは、CKCトレーニングが効果的に行われる事で、関節や筋の協調性を高め、固有受容器の活性化に大きな影響を与えると報告している。したがって、このエクササイズは、膝関節周囲筋の促通と安定性向上に効果的であると考えられる。