理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 367
会議情報

骨・関節系理学療法
変形性膝関節症におけるlateral thrustと大腿二頭筋の筋硬度の関係
*出口 直樹金澤 浩岩本 久生浦辺 幸夫矢部 友博吉田 和代白川 泰山
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】変形性膝関節症(膝OA)の特徴的な現象としてlateral thrust(LT)がある。LTは歩行時のheel contact直後に出現する脛骨の外旋を伴う急激な膝関節の内反運動である。LT出現因子として下肢の内反変形や膝関節の動揺性があげられ、大腿二頭筋の緊張増加が関与しているとの指摘もあるが、その客観的な報告は少ない。LTの出現因子を知ることは膝OAの理学療法において重要である。本研究では、大腿二頭筋の筋硬度を調査し、LTとの関連性について検証することを目的とする。
【方法】対象は、当院に外来通院中で片側にLTを生じる内側型膝OA患者14名(男性2名、女性12名)で、年齢(平均±SD)79.2±7.4歳、身長147.4±8.4cm、体重49.5±7.6kgだった。筋緊張の測定は筋硬度計(PEK-1 井元製作所製)を使用した。測定肢位は、腹臥位(膝関節自動運動での最大伸展位)、安静立位、片脚立位とした。これらの肢位の選択理由として、腹臥位はOKC(open kinetic chain)で筋収縮のないが筋が伸張されていた状態、安静立位はCKC(closed kinetic chain)で筋に一定の収縮がみられる状態、片脚立位は歩行の立脚期に近い状態で、他の肢位よりも大腿二頭筋の筋収縮が大きいと考え選択した。測定部位は、腓骨頭より近位5cmの大腿二頭筋腱(腱部)、大腿二頭筋の起始と付着間の遠位1/3(遠位1/3)、大腿二頭筋の起始と付着間の中央(中央部)の3点とした。また、膝関節最大伸展角度も測定した。
【結果】腹臥位での筋硬度は、LT出現側、非出現側で測定し腱部は、58.2±2.9kpa、52.8±3.5kpa、遠位1/3は45.5±4.5kpa、44.1±4.6kpa、中央部は38.6±3.4kpa、38.9±4.7kpaだった。安静立位では、腱部は57.2±5.4kpa、54.3±4.5kpa、遠位1/3では47.3±6.3kpa、45.2±5.5kpa、中央部では40.2±4.5kpa、41.0±5.7kpaだった。そして片脚立位では、腱部が58.7±6.2kpa、55.0±6.0kpa、遠位1/3が47.7±8.4kpa、47.0±6.6kpa、中央部が41.7±6.7kpa、42.7±5.6kpaだった。このうち、腹臥位での腱部についてのみはLT出現側が非出現側よりも有意に高かった(p<0.05)。膝関節伸展角度については、LT出現側-6.4±5.3°、非出現側-7.1±6.4°両側で差はなかった。また、膝関節伸展角度を-10°未満(-2.8±2.7°)と-10°以上(-11.5±4.5°)に分けて筋硬度を比較すると、肢位や部位の違いによる差はなく、両側間で差はなかった。
【考察】研究者の検索した範囲で、大腿二頭筋の筋緊張を筋硬度で表したものはなかった。今回3つの異なる肢位で大腿二頭筋の3部位で筋硬度の測定を行った。LTを有する側については腹臥位での腱部のみに有意な筋硬度の上昇を認めたが、このような現象が起こっているのかその理由を更に追求していきたい。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top