抄録
【目的】人工膝関節形成術(TKA)は、近年人工関節のデザインの改良、材質の改善、手術手技の向上により長期的にも術後成績は安定している。そこで今回は、TKA施行目的での入院RA患者を膝関節以外の関節手術の併用の有無により分類しその膝機能回復経過と実用歩行獲得について比較検討し、さらに5年以上経過観察のできた症例分析を含め考察を加える。
【対象と方法】対象は1993年4月から2003年3月までの10年間、当院におけるTKA施行RA患者297人415関節(女性246人、男性51人)、平均年齢65.0歳、平均罹病期間12.0とした。症例は、Stage3:196人、Stage4:101人、Class2:142人、Class3:136人、Class4:19人であった。
対象症例は、1群:片側TKA(148人)、2群:両側順次TKA(81人)、3群:両側同時TKA(22人)、4群:膝関節以外の関節手術と併用して施行したTKA(46人)の4群に分類した。調査項目は、術前および退院時の10m歩行速度、膝機能として、術前、手術後2週目、手術後4週目、退院時に屈曲拘縮角度、伸展lag、屈曲角度、側方動揺、また片側TKA、両側順次TKA、両側同時TKAについては術後から退院までの期間を調査した。また5年以上経過観察のできた症例93人(121関節)においては最終評価時における膝機能および10m歩行速度を調査した。実用歩行とは、通常の歩行において10m歩行速度が13秒未満の場合と規定する。
【結果】入院期間は、1群平均39日、2群82日、3群42日であった。4群における膝関節以外の関節手術の内容は、頚椎固定術、人工関節(肘、指、股)、手関節、足関節固定術、足指形成術である。
膝機能回復経過は屈曲拘縮角度術前5、術後2週目1、術後4週目0、退院時0、伸展lag術前9、術後2週目13、術後4週目6、退院時4、屈曲角度術前120、術後2週目101、術後4週目115、退院時118であった(数字は角度を示す)。全症例の歩行レベルは、術前歩行不能16人(5%)、実用歩行(-)205人、実用歩行(+)76人(26%)、退院時術前歩行不能4人(1%)、実用歩行(-)214人、実用歩行(+)79人(27%)、最終評価時(5年以上)40人(43%)であった。
【考察】RA患者に対するTKA施行後の膝機能回復は入院中の他の関節手術施行の有無にかかわらず術前の膝機能の把握により術後の回復程度が予測された。
他の関節手術(下肢)と併用して施行したTKA例46人では退院時に34人実用歩行を獲得できなかったが最終評価時(5年以上)においては20人中8人が実用歩行を維持していた。入院期間の遅延症例においては、膝関節の高度骨欠損、重度の膝屈曲拘縮例以外に全身的合併症、多関節罹患およびムチランス症例を含み、全身状態や他関節の臨床症状には常に注意が必要である。入院の長期化する患者においては、患者へのリハビリテーションに対する意欲付けやその理解を促すことが理学療法士としても大切である。