理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 399
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骨・関節系理学療法
膝蓋骨骨折術後の膝関節屈曲角度の検討
―骨折型に着目して―
*押川 達郎飛永 浩一朗井手 睦
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キーワード: 膝蓋骨骨折, 膝関節, 骨折型
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抄録

【目的】膝蓋骨骨折術後は膝関節の可動域制限を認めるため,急性期の理学療法における膝関節屈曲角度の早期獲得は重要であるが,それに関する報告は少ない。今回,臨床での可動域獲得の具体的な指標を得るため骨折型による術後期間と膝関節屈曲角度の推移について検討したので報告する。
【方法】平成13年1月から平成16年6月までに当院に入院した膝蓋骨骨折患者のうち、骨接合術を施行した患者36名を対象とした。男性25名,女性11名。平均年齢51.6±18.6歳であった。骨折型の分類は, 横骨折が19,縦骨折が6,粉砕骨折が11名であった。手術法は,Tension Band Wiring法25例,スクリュー固定6例,ワイヤー締結法3例, Tension Band Wiring法とスクリュー固定の併用が2例であった。診療録から,術後リハ期間,膝関節屈曲角度(術後7日,14日,転・退院時の最終時で測定)を調査し骨折型による膝関節屈曲角度の違いを検討した。対象者は,術後外固定を行わず早期に関節可動域訓練を開始できた者に限定した。平均術後リハ期間19.1±7.8日であった。統計学的処理にはt検定を用いた。
【結果】骨折型における術後7日・14日・最終時の可動域角度の推移は,横骨折では107.6±18.8度,124.5±18.8度,131.6±17.2度。縦骨折では,123±19.6度,134.7±18.2度,139.7±10.3度。粉砕骨折では84.4±18.4度,111.4±18.3度,118.2±22.5度であった。術後7日・14日・最終時とも粉砕骨折において横骨折・縦骨折よりも有意(p<0.05)に低い値を示し、横骨折と縦骨折では横骨折が低い値を示したが、有意差は認めなかった。各骨折型間でのリハ実施日数に有意差は認めなかった。
【考察】膝関節屈曲角度の可動域制限は粉砕骨折が最も大きく次いで横骨折,縦骨折という結果になった。藤井らは,膝蓋骨骨折後全例に骨折型に拘わらず膝蓋腱長の短縮・膝蓋骨低位を認めたと報告しており,その原因として,骨折による膝蓋腱の血行不良と,手術侵襲による二次的な繊維化に加え,周辺軟部組織の拘縮を生じたためであると述べている。粉砕骨折は単純骨折よりも関節内・関節近傍の出血や軟部組織の損傷が大きく,膝蓋腱の短縮する因子は増加し、可動域制限も増大したと考える。骨折型による可動域の差は膝蓋腱に加わるストレスの方向が影響しているのではないかと考えた。横骨折では膝屈曲時に膝蓋骨の近位部の四頭筋腱と遠位部の膝蓋腱により骨折片が引き離される方向にストレスが加わる.また,周辺軟部組織も大腿四頭筋を横断するように損傷していると考えられ縦骨折よりも膝屈曲時の軟部組織の伸張痛を誘発し,可動域制限を認める傾向を示したと考えた。今回の結果で得た指標を用い,患者にインフォームドコンセントを行いながら,早期からの膝関節可動域獲得に役立てていきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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