抄録
【目的】当院では2000年より人工膝関節置換術(TKA)に対するクリニカルパスを導入し,在院日数が短縮され,医療の効率化に役立ちうることを昨年本学会にて報告した.しかし,両側同時手術例,片側手術例共に同一のクリニカルパスを使用しており経過が異なることが推測される.研究目的は,両群間でクリニカルパスの経過や退院時,再評価時の術後成績の違いについて検討する事である.
【方法】対象は2001年1月から2003年12月までに,当院整形外科にてTKAを施行した39症例とした.原疾患は全例変形性膝関節症で,両側同時手術例(両側同時群)が24例,片側手術例(片側群)が15例であった.平均年齢はそれぞれ72.6±7.8歳,70.3±7.9歳で両群間に年齢差は認めなかった.検討項目は,入院時,退院時および再評価時の機能評価を日整会膝疾患治療成績判定基準(JOAスコア),術後から退院までの日数(退院日数),術後から杖歩行自立までの日数(杖自立日数)とした. 統計処理はMann Whitney検定を使用し,5%有意水準とした .
【結果】両群間において杖自立日数,退院日数では差を認めなかった.また,杖自立日数では退院時の28日より長くかかったものをバリアンスとすると,両側同時群で4.2%,片側群で6.7%であった.退院日数では,当院の目標は術後28日と設定している.しかし,日柄の良い日に退院を希望する症例が多く,術後34日を目標退院日とすると,35日以上が両側同時群で16.7%,片側群で20.0%であった.入院時の両側同時群と片側群のJOAスコアの比較では,有意差は認めなかった.同様に退院時,再評価時においても両群間に有意な差は認められなかった.両側同時群,片側群それぞれにおける退院時と再評価時のJOAスコアの比較においては、両群共に再評価時に総計点数が有意に改善されており,いずれも疼痛に関連した移動能力に基づくものであった.
【考察】片側群は,両側同時群に比べ非術側下肢が支持側となるため,早期に歩行が獲得されやすいと予想した.しかし,両群ともに杖自立日数および退院日数は同程度であった.再評価時のJOAスコアは両群間に差はなく,また退院時と再評価時のJAOスコアの比較では有意な改善を認めた.このことより当院のTKAに対するクリニカルパスは,両側,片側例に関係なく良好な成績を獲得していると言える.しかしクリニカルパスには80%程度の症例がパス通りにケアが進み,20%は逸脱,脱落するとされる80・20ルールがある.今回の杖自立日数ではバリアンスとなった症例が両群共に5%程であったことを前述の80・20ルールにあてはめると,20%までの逸脱が許されると考えられ,さらにスケジュールを短縮することが可能であると考える.また,諸家の報告と比べTKA術後退院日数は片側群ではまだ改善の余地があると推察できる.今後正または負のバリアンスの原因を検討し,スケジュールの改変を行い,より適正に標準化されたクリニカルパスに改変していく必要性があると考える.