抄録
【はじめに】腰椎椎間板ヘルニア(LDH)の現在の治療方針は臨床所見と画像診断にて決定され臨床所見が優先される傾向にある。以前より我々は保存療法を行う上で臨床症状の激しい症例ほど予後良好であり所見の軽度~中等度の症例は遷延傾向にあることを経験してきた。この現象が画像診断の進歩と共に解明され、それが一つのLDHの治療指針として受け入れられつつある。今回、急性発症したLDH症例を早期画像診断にて自然退縮例と判断し、積極的な保存療法(神経ブロック・リハビリテーション)を施行し早期スポーツ復帰を可能とした。そのMRI所見と神経学的所見の推移、またリハビリテーションの開始基準について検討報告する。
【方法】画像所見は東芝MRI EXCELARTTMMRT-2001/p2 1.5Tにて受傷時、3週後、3ヵ月後、6ヵ月後の4度の撮像を行い、Gd-DTPA静注後の増強効果の有無、脱出椎間板組織(ヘルニア)による脊柱管内狭窄率の経時的変化を観察し同時期に神経学的所見(疼痛・ラゼーグ徴候・筋力・歩行能力・バルサルバ徴候等)の推移を評価した。
【結果】初回のMRI所見はL5/S1左側後下方に脱出したヘルニアを認めT1WIFatSat(Gd-DTPA)にて周囲に増強効果を認めた。3週後にはヘルニア内部までenhanceされており、自然退縮Typeである事が判断できた。脊柱管内狭窄率は初回33%→17.5%→9.5%→7.8%と順調なヘルニア塊の退縮をみた。一方、神経症状には画像所見とは解離するような所見をいくつか観察できた。初回のMRIにて圧排消失していたS1神経根が3週後の画像では描出しラセーグ徴候30→65°へ改善したにもかかわらず根性坐骨神経痛(Wong&Baker Face scale5)は継続し筋力低下は進行傾向にあった。また歩行能力はバルサルバ徴候の消失後より急激な改善を示した。スポーツ復帰は3ヵ月で果たすも筋力の正常化には6ヵ月を要した。
【結語】症例はTrans-Ligamentous ExtrusionTypeのヘルニアであり造影MRIにて増強効果を認めヘルニア塊の自然退縮を確認できた。このようにLDH急性期のMRI(Gd-enhance)は診断的意味のみでなく、早期に予後を予測するパラメーターとして、また治療方針決定の一つの重要な指標となりうると思われる。LDHの保存療法におけるリハビリテーションは画像所見を参考に、臨床所見の推移を的確に把握し、適切な時期の適切な指導が重要である。特にValsalva signの陰性化は積極的リハビリテーション開始の指標と思われた。今後、LDHの臨床治療基準の一つに造影MRIが盛り込まれると思われる。
また今回は、数例のLDHの自然退縮例と保存療法に固執した結果神経症状の遷延した巨大ヘルニア症例等も呈示する。