理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 755
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骨・関節系理学療法
椎間関節(zygapophysial joint)からみた腰痛
―関節滑動動態の評価と治療―
*加藤 力也近藤 春朗志水 義人太田 佳孝森 弘二郎岡 英尚重野 利幸服部 寿門
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抄録
【目的】
腰痛を訴えて受診する患者はきわめて多い。その中には椎間関節の滑動障害からくる腰痛症も多いと考えている。この関節滑動障害の多くは、関節面同士のひっかかりや、関節軟骨の質的劣化により、滑りが障害された状態だと考えられる。一方、非特異的な腰痛症の確定診断は容易ではない。椎間関節性腰痛症の確定診断をするためには、神経根症状を有するもの、骨粗鬆症、腫瘍、外傷などをまず対象から除外する。次に疼痛誘発テスト、one point indication testに注目し、レントゲン所見を形態的、生態力学的に解析し、滑動障害がおきている責任椎間関節を決定する。
そこへ滑動障害を改善する最小限の徒手的治療Minimally Manipulation(以下M.M)を、棘突起を介して行い、その場で疼痛の軽減や、可動域の改善した症例を、椎間関節性腰痛症と確定診断をする。
この責任椎間関節の動態の評価と治療結果を紹介する。
【対象】
対象は、3ヶ月間に当院を受診した、新患腰痛患者138名のうち、神経根症状を有するもの、骨粗鬆症、腫瘍、外傷などを除き、椎間関節性腰痛症と予測された94症例である。内訳は男性43症例、女性51症例で、平均年齢は37.7歳(12~69歳)であった。
【方法】
前述のごとく責任椎間関節を決定したあと、関節滑動障害を修正するM.Mを行う。
治療手技後、もう一度疼痛誘発テストを行い、疼痛軽減の程度、可動域の変化を記録する。疼痛の評価にはVAS(ビジュアルアナログスケール)を用い、治療直前、直後の変化を記録した。
【結果】
椎間関節性腰痛症と予測された患者94症例のうち、責任椎間関節が決定できた症例は73症例で、それらを治療対象とした。
73症例中M.M後、疼痛が軽減したものは、60症例82%であった。そのうちVAS(10→0)評価をしたものが、全体の73症例中62症例であった。62症例中、VAS値に軽減が見られたものが52症例で、VAS値に変化のなかったものが10症例であった。治療後の平均VAS値は6.4であった。
【考察】
M.Mにより、関節の機械的感覚受容器に一次的に関わる関節滑動障害を改善することによって、椎間関節由来の疼痛を軽減することができた。しかしM.M後もある程度の疼痛は残る。これは、化学的侵害受容器に関わる関節炎は改善できないからである。これに対しては、トリガーポイント注射や投薬、その後の理学療法が行われる。
腰痛患者の多くには、責任椎間関節レベルのデルマトームと一致しない関連痛が存在する。それがM.M後に軽減することがある。この関連痛の発生メカニズムは、椎間関節に分布する、求心性線維とシャントをもつ傍脊柱交感神経線維が関係しているといわれている。したがって責任椎間関節の滑動障害の修正は、求心性交感神経線維による関連痛も軽減するものと思われる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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