理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 944
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骨・関節系理学療法
頚椎症性脊髄症に対する下肢10秒テスト
*永吉 理香武田 芳夫齋藤 務本田 憲胤濱村 和恵澤田 優子西野 仁浜西 千秋福田 寛二松村 文典
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抄録

【目的】
頸椎症性脊髄症は頚椎の退行変性を基礎として発症する.四肢の痙性が主症状であり,具体的には手指の巧緻運動障害と歩行障害を主訴とする進行性の疾患である.疾病の進行度の指標として,上肢については10秒間の手指伸展の回数を評価する「10秒テスト」がある.しかし下肢については具体的な指標がない.今回脊髄症の新しい機能評価法として,下肢機能に対する10秒テストの有用性について検討した.
【対象及び方法】
頸椎症性脊髄症患者11例(年齢69±9.8歳)、健常人11例(58歳±8.9歳)を対象とした.座面の高さ40cmの椅子に座り床に足をつけた状態で、足下にある前後2カ所の印(約30cmの幅)に踵を打ち付ける回数を10秒間で計測した。頸椎症性脊髄症患者は術前と術後3週目で測定し、頚髄障害の重症度は日整会頸髄症判定基準(JOAスコア)により評価した。統計処理はノンパラメトリック検定を用い有意水準をp<0.05とした。
【結果】
下肢10秒テストは健常人29±4.9回、頸椎症性脊髄症患者22.8±4.8回で,有意に頸椎症性脊髄症患者で回数が少なかった(マン・ホイットニ検定p<0.05)。頸椎症性脊髄症患者において,JOAスコアは術前10±1.7点、術後13.4±1.8点と有意に改善していた(ウィルコクソン符号付順位和検定p<0.05)。また患者群で神経症状のより著明な下肢を対象に,下肢10秒テストの回数を比較した.術前22.9±4.1回、術後25±5.5回となり,有意に術後にその回数が増加した(ウィルコクソン符号付順位和検定p<0.05)。下肢10秒テストとJOAスコアとの間には相関(スピアマン順位相関係数検定)は認められなかった。
【考察】
頚椎症性脊髄症における上肢機能に関しては,具体的なADL障害として評価することが容易である.また,定量的観察法として手の10秒テストが有用である。しかし下肢の場合、階段昇降や歩行障害などのADL障害があるが,定量的評価法がなかった.そこで今回,上肢と同様の10秒テストを導入することとした。この方法は下肢の伸筋群・屈筋群の協調した動きを必要とする為、痙性麻痺の評価に有用と考えた。健常人の方が10秒テストはスムーズで回数も多く、患者群においてもJOAスコアの改善とともに,術後の回数が明らかに増加していた.今回は症例数が少ない為か、JOAスコアとの間に相関は見られなかったが,下肢10秒テストは錐体路障害を反映する臨床的指標になりうると示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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