理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 952
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骨・関節系理学療法
超音波画像による頚長筋の機能評価
*樋口 善英斉藤 昭彦佐々木 博小池 貴久丸山 仁司
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抄録

【背景と目的】体幹筋群は浅層に位置するグローバル筋群と深層に位置するローカル筋群とに分類される。近年、従来行われてきたグローバル筋群へのアプローチに加え、ローカル筋群に注目した脊椎の分節的安定性のためのアプローチが注目されている。頚部においては、ローカル筋群に分類されている頚長筋が、脊椎の安定性に重要な役割を果たすことが指摘されている。臨床上、頚長筋の機能を把握することが重要ではあるが、従来の筋力検査法を用いて評価する事はできない。本研究では、超音波画像から非侵襲的に頚長筋の機能評価を試みることを目的とした。
【対象と方法】健常成人6名〔男性3名、女性3名、平均年齢:25.2±5.4歳(22-36歳)、平均身長:165.7±10.7cm、平均体重:57.17±10.7kg〕を対象とした。研究の主旨と方法に関しての説明を十分に行ったあと、被験者の承諾を得て実施した。被験者を背臥位とし、超音波診断装置(東芝社製Powervision-8000)のプローブ(8MHz)を頸動脈三角の胸鎖乳突筋上部に位置させ、体表面から胸鎖乳突筋、総頸動脈、頚長筋の三層構造をイメージングした。口頭指示にて頭部を屈曲するようにして頚長筋を収縮させたときの各筋の超音波イメージをBモードにて記録し、それぞれの筋腹幅を計測した。また、SieScapeモードにて記録可能な超音波診断装置(シーメンス社製Sonoline-Antares)を用いて頚部の連続画像を記録した。
【結果】記録された超音波画像上において、浅層から深層へ向かって胸鎖乳突筋、総頸動脈、頚長筋の三層構造を明確に捉えることが可能であり、各筋の作用を動画上での変化として捉えることが可能であった。典型例における頚長筋の筋腹幅は、安静時5.8mm、収縮時8.1mmであり、安静時と比較して収縮時に著明に増加した。
【考察】頚長筋の機能評価の試みとしては、比較的簡便な方法に頚長筋の作用時の体表面の変化を圧バイオフィードバック装置により圧変化として捉える方法がある。しかし、この方法では他の筋による代償運動をチェックする高度なスキルが要求される。これに対して今回試みた方法では、頚長筋の機能を非侵襲的かつ動的に捉えることが可能であり、必要に応じて画像解析による定量的評価が可能である。

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© 2005 日本理学療法士協会
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