理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 951
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骨・関節系理学療法
姿勢制御に影響を及ぼす足趾機能の評価
―足趾筋力の測定方法についての実験的研究―
*高木 祥藤澤 周平成田 大一尾田 敦
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抄録

【はじめに】足趾は,立位姿勢の保持や歩行時の立脚後期における推進力の効果器及び伝達器として重要である。特に立位での足趾捕地能力は高齢者の転倒予防において重要な能力とされている。過去の足趾筋力に関する研究でも,足趾を屈曲させて引く力(以下,把持力)については多くの報告があるが,実際に地面を踏ん張るときや蹴り出す場面では,足趾は伸展位で地面を下に押している。今回,足趾の把持力と地面を下に押す力(以下,踏力)を,自作の簡易筋力測定器と足圧分布測定システムF-SCANを用いて測定し,測定値の再現性と両者の関連性について検討した。
【対象と方法】対象は弘前大学医学部保健学科に在学中の学生20名(男性8名,女性12名,年齢22.3±1.7歳,身長167.1±8.5cm,体重57.5±9.3kg)40足とした。足趾筋力は竹井機器製握力計GRIP-D5101を使用した木製の簡易筋力測定器を自作して,足趾による把持力と踏力を各3回測定し,数日後に再度各3回測定し,2度目の測定での各3回の平均値を求めた。把持力は自然立位にて,踏力は正中位と前傾位の2種類で測定した。いずれも足関節中間位で下腿を地面と垂直になるよう固定した。踏力は足趾MP関節軽度伸展位で測定した。さらに,踏力はF-SCANにおいても測定し,自作の簡易筋力測定器と同様の設定にするため,足趾挙上,踵挙上の2種類のウェッジを用いて足趾MP関節軽度伸展位とし,下に押す力を各3回,2度の測定で2度目の各3回の平均値を求めた。3回の測定結果の級内相関係数ICC(3,3)を求め,測定値間の相関係数を求めた。
【結果】簡易筋力測定器による測定値のICCは,把持力で0.986,正中位踏力で0.978,前傾位踏力で0.984であった。また,F-SCANにおける踏力は,足趾挙上で0.963,踵挙上で0.940であった。把持力と正中位踏力,前傾位踏力,F-SCAN(足趾挙上),F-SCAN(踵挙上)との相関係数は,それぞれr=0.664,0.691,0.611,0.547でいずれも有意であった。また体重と各測定値との間には,把持力で0.655,正中位踏力で0.656,前傾位踏力で0.657,F-SCAN(足趾挙上)で0.481,F-SCAN(踵挙上)で0.366といずれも有意な相関を認めた。
【考察】自作の簡易筋力測定器の把持力及び踏力はいずれも高い再現性が確認できた。また,F-SCANでもICCは高く再現性は認められたが,被検者によっては重心の位置が一定ではなく,各施行間における顕著な変動も認められた。簡易筋力測定器での把持力と踏力,F-SCANでの踏力はいずれも有意な正の相関を認めたことから,足趾筋力の評価には高価で複雑な機器を用いなくとも,簡便な筋力測定器によって評価可能であり実用的といえる。さらに把持力と踏力では基本的に筋力の発揮形態が異なってはいるが,有意な正の相関を示したことから,把持力の測定によって地面を踏ん張る時の力や歩行時の蹴り出しの力がある程度予測可能であると考えられた。しかし,足趾筋力は体重との有意な相関を示すため,体重による補正の必要性が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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