理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 999
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骨・関節系理学療法
成長期バスケットボール選手における着地動作の検討
*川崎 秀和下川 円鵜飼 啓史内藤 浩一
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キーワード: 成長期, 着地動作, 身体重心
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抄録

【目的】成長期スポーツ障害では、成長に伴う骨長・筋長の不均衡や不適切なフォーム等の内的要因と、運動スケジュール等の外的要因が存在している。対症療法のみでスポーツ復帰すると痛みの再発をおこすものも多く、動的場面での身体各部位の対応に着目することが予防を含めた理学療法を展開する上で重要である。今回成長期バスケットボール選手の着地動作に着目し、三次元動作解析を行った。
【対象と方法】スポーツ動作中、下肢に愁訴を有さない同一バスケットボールチームの男子中学生(平均年齢13±0.86歳、平均身長166.2±7.4 cm、平均体重 52.0±6.7kg)を対象とした。脛骨粗面部の発育段階はEHRENBORG X-P STAGE分類 Cartilageous期2名、Apophyseal期2名、Epiphyseal期14名、Bony期0名であった。課題動作は被検者が楽に一歩前方へ踏み出した距離へ46cmの台より両足着地を行わせた。動作解析には三次元動作解析装置(アニマ社製MA2000)を使用し、被検者の両側肩峰・股関節・大腿骨外側上顆・腓骨外果・第3中足骨頭・第7頚椎・第7胸椎・第12胸椎・第2仙椎の各棘突起・両側腸骨稜に赤外線反射マーカーを貼付した。得られたデータより各関節角度の変化量、下肢関節の角速度、また生体定数より身体重心(以下COG)を算出した。腓骨外果より4.5cm後方座標を、支持基底面(以下BOS)の後縁を原点とし、COG の前後方向変位量と着地後にCOGがBOSに入るまでの時間を算出した。柔軟性のテストにはSLR、踵が殿部に付くまでの抵抗値(HOGGAN社製MICRO FET2)、身長に対する開脚率、足関節背屈角度を測定した。COGの各項目と柔軟性、関節変化量の相関関係と、角速度グラフにより運動連鎖を検討した。統計処理はPearsonの相関係数を用い有意水準は5%とした。
【結果】柔軟性テストとCOG各項目間には相関が見られなかった。股関節、足関節の変化量と着地時のCOGがBOS内に入るまでの時間に負の相関がみられた(P<0.05 r=-0.5)。運動連鎖では着地前から着地にかけて骨盤の前傾が遅れるものがみられた。また着地後、下肢の各関節の減速時間が少ないものがみられた。
【考察】今回健常者において、着地時のCOG後方位や減速時間の減少、骨盤前傾の遅れといった身体制御の特徴を有するものがいた。成長期の運動療法では、骨端成熟段階のレベルを把握し牽引力や荷重による微小外力の反復を制御することが重要である。また柔軟性の獲得のみならず、負担のかからない動作を認識させ、獲得していくことが障害予防に重要であると再認識された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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