理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1001
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骨・関節系理学療法
デイケア施設職員における入浴介助に伴う作業負担について
―OWAS法を用いた人間工学的分析による検討―
*上月 芳樹たき平 司 (たきは木へんに得の右側)
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キーワード: 入浴介助, 作業負担, 腰痛
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抄録

【はじめに】作業関連性疾患としての腰痛は全ての産業に共通する対象疾病であり、特に保健医療関連職では約7~8割の高い腰痛有訴率が報告されている。我々は以前に介護職員を対象に腰痛の実態調査を行い、発症原因となる作業として「入浴介助」が在宅・施設共に最も多いとする結果を第38回日本理学療法学術大会等で報告し、これに伴う腰部への負担は大きいことが予測される。今回、デイケア施設職員の入浴介助作業を人間工学的理論に基づいた手法で評価・分析し、作業負担の実態に関する検討を行った。
【対象と方法】対象は整形外科医院に併設されたデイケア施設に勤務する職員8名(介護職員6名―男性4名・女性2名、看護職員2名―共に女性)で、年齢は35.9±12.0歳(23~53歳)であった。入浴介助の評価では簡便な作業姿勢評価法として諸外国で利用されているOWAS(Ovaco Working Posture Analysing System)法を用い、作業開始から終了までの間に作業内容と姿勢を30秒間隔で読み取り、作業コードと4桁の姿勢コード(1桁目―腰部1~4、2桁目―上肢1~3、3桁目―下肢1~7、4桁目―重さ又は力1~3)を記録した。今回は全対象者における作業負担の全体的傾向を把握する為、記録した結果から作業別に観察数やAC(Action Category:姿勢コードから判定される4段階の負担度)を集計し、観察数の合計及びAC4とAC3の合計回数(筋骨格系への全体的負担度)が特に多かった作業に関しては腰部の姿勢について別途検討を行った。
【結果】作業別では全観察数1991回中「シャワー使用・湯をかける」405回(20.3%)、「衣服着脱介助」246回(12.4%)、更に各作業におけるAC4+AC3の回数では計249回中「衣服着脱介助」68回(27.3%)、「身体を洗う」31回(12.4%)、「シャワー使用・湯をかける」24回(9.6%)等の順に多く、これらの作業に関して「背部を曲げる・捻る」姿勢をとった回数は「シャワー使用・湯をかける」405回中267回(65.9%)、「衣服着脱介助」246回中164回(66.7%)、「身体を洗う」192回中160回(83.3%)であった。
【考察】作業別の観察数及びAC4+AC3の回数においては特に衣服着脱介助やシャワー使用が上位を占め、いずれの作業も腰部を曲げる・捻るといった不良姿勢が多いことから腰部をはじめとする筋骨格系への負担が他作業に比べて高いことが予測される。また、身体を洗う作業では作業別の観察数において衣服着脱介助やシャワー使用よりも低率である一方、不良姿勢の出現率は8割以上と極めて高く、特に作業姿勢の観点から更に詳細な分析が必要といえる。今回の結果から、入浴介助の場面において主にこれらの作業に伴う身体的負担の高さが窺え、今後作業負担の軽減を行うと共に腰痛発症予防を目的とした改善策の必要性が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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