理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1005
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骨・関節系理学療法
中斜角筋症候群に対する直線偏光型近赤外線照射療法
*山田 雄士森川 美紀上宮 等江瀬 大和有川 功
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抄録

【目的】中斜角筋緊張持続により生じる多種多様の安静時痛と肩関節制動を我々は中斜角筋症候群と呼んでいる。中斜角筋症候群症例の中斜角筋に対する最初の処置としての直線偏光型近赤外線照射療法(以下、近赤外線療法)を行い、治療的価値と位置付けについて検討する。
【方法】対象:2002年4月16日から同年6月15日までに、当院外来で中斜角筋症候群と診断された初診患者85名である(安静時痛58名、肩関節制動27名)。
診断方法:対象患者に対し選択的に中斜角筋の緊張緩和を意図して対応した結果、その直後に症状と所見が消失~改善したものを中斜角筋症候群とした。治療法:最初の処置として中斜角筋トリガーポイント(以下、TrP)に近赤外線療法(東京医研製SUPER LIZER HA-550レンズユニットBタイプ使用 出力100% で2秒間照射,5秒間休止のサイクルで7分間照射)を施行した。安静時痛と肩関節制動が残存した場合は中斜角筋に対し頸椎牽引療法を施行した。更に安静時痛と肩関節制動が残存した場合はストレッチング療法を施行した。
【結果】最初の処置として近赤外線療法を施行した結果を以下に示す。安静時痛58名:安静時痛消失13名、安静時痛改善45名、安静時痛変化なし0名。肩関節制動27名:肩関節制動消失4名、肩関節制動改善14名、肩関節制動変化なし9名。近赤外線療法後に残存している安静時痛及び肩関節制動は頸椎牽引療法及びストレッチング療法を追加した結果、全症例の安静時痛と肩関節制動が消失した。
【考察】1.中斜角筋症候群の病態
筋筋膜痛機能障害症候群である中斜角筋症候群は
中斜角筋内TrPの活性化により生じる関連痛,中斜角筋を貫通する肩甲上神経・長胸神経・肩甲背神経の絞扼による支配筋群部の安静時鈍痛,中斜角筋貫通神経支配下筋肉群内TrPの活性化による関連痛,中斜角筋内TrP関連痛領域の筋肉群内TrPの活性化による関連痛,中斜角筋を貫通する神経群の絞扼による肩関節制動,前斜角筋及び小胸筋の筋緊張による上腕神経叢及び鎖骨下動脈の圧迫からなる症候群。
2.近赤外線療法の作用機序
近赤外線療法の特徴は生体深達性の高い波長帯(0.6μm~1.6μm)を有する事である。近赤外線療法の作用は光エネルギーが輻射熱に変換される時に生じる温熱作用による生体作用の活性化である。中斜角筋部の皮膚と筋肉の間(皮膚~皮下組織~筋筋膜~筋肉)には厚い脂肪組織がある。近赤外線療法の刺激は厚い脂肪組織を貫通し、中斜角筋筋膜部に到達している。又、近赤外線療法は非侵襲性で簡便であり副作用が無く長期間使用可能である。
【まとめ】全身及び中斜角筋を含む周囲の筋肉群の筋緊張を緩和させた後になお 残存している中斜角筋内TrPの不活性化に近赤外線療法は有用である。

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© 2005 日本理学療法士協会
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