理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1007
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骨・関節系理学療法
マリガンシートが腰椎彎曲と筋活動に与える影響
*国武 ひかり下野 俊哉齋藤 裕一
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抄録

【目的】生活の中で腰痛は多く経験する症状であり,医学的管理を脱しても姿勢や作業条件によるストレスで再発を繰り返し易く自己管理が必要となる.日常椅子座位での作業に多くの時間を費やし,この姿勢での持続作業は特に腰部へのストレスを増大させる.Brian R Mulliganは椅子作業時の腰椎の生理的前彎を促す座面シート(以下マリガンシート)の有用性を報告している.今回このシートを用いた時の腰椎への影響について彎曲度と筋活動の両面から検討した.

【対象】健常男性15名(年齢25.7±3.0歳)とし,研究に対し事前に書面による同意を得た.

【方法】股関節,膝関節屈曲90度の椅子座位をとり,肩関節屈曲30度の楽な姿勢でのパソコン作業を5分間行う.十分な休息後,マリガンシートに座り再度同様の作業を5分間行いマリガンシートの影響について検討した.表面筋電図はNoraxon社製Myosystem1200とMyovideoを同期させ、電極部位は腰部脊柱起立筋(以下ES)でL3棘突起2横指外側,腰部多裂筋(以下MF)でS1棘突起外側とし作業時の筋活動を導出し比較した.また同時に矢状面における脊椎アライメントの計測のためにマーカーを設置した.骨盤傾斜角度は床への垂線と上前腸骨棘,下後腸骨棘を結ぶ線のなす角とし,腰椎前彎角度は棘突起とJacoby線との交点から上方へ7.5cm,下方へ2.5cmのマーカー間のなす角として計測し彎曲度を比較した.この時背側になす角をプラスとし前彎度を示した.統計学的処理にはt検定を用い5%未満を有意とした.

【結果】ESの筋活動は作業開始時と5分後ともに,椅子座位に比べマリガンシート座位で有意に減少した(p<0.05).同様にMFの筋活動も作業開始時と5分後ともに,椅子座位に比べマリガンシート座位で有意な減少を示した(p<0.05).骨盤傾斜角度は椅子座位に比べマリガンシート座位時には,座位作業開始時に3.6±7.3°,5分経過時に3.2±7.0°と骨盤前傾角度の増加,腰椎前彎角度は座位作業開始時に1.4±8.8°,5分経過時に0.9±7.3°と前彎のわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった.

【考察】今回の結果より,椅子座位作業時にマリガンシートを使用することにより,通常の座位作業時と比較して,作業開始直後から5分後も継続してES,MFの筋活動の有意な低下を示し,マリガンシートの使用によって腰部背筋へのストレスは軽減できると考えられた.一方,マリガンシート座位による腰椎前彎角は作業開始直後と5分後ともにわずかではあるが前彎を示し,作業中の腰椎を中間位から前彎位に維持できる傾向を認めた.今後,様々な作業場面による影響や腰痛症状の改善および予防に有効であるか検討することが必要と思われた.

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© 2005 日本理学療法士協会
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