抄録
【目的】
我々は37回、38回本学術大会において、上葉区・上下葉区に関するWilliamが提唱した排痰法(以下、旧排痰法)と修正された排痰法(以下、修正排痰法)で定められた排痰肢位で区域気管支および亜区域気管支の角度を測定し、その結果から新たな排痰肢位を提案した。そこで、本研究では研究の継続として、中葉区ならびに上下葉区を除く下葉区に関して、区域および亜区域気管支角度を測定し、それらの排痰肢位と我々が提案した排痰肢位との比較、および新たに提案した排痰肢位が有効な肢位となり得るか検討を行った。
【方法】
10%ホルマリンにて組織固定された邦人肺標本を左右15個体ずつ使用し、各々の肺の中葉区(S4、S5)気管支と下葉区(右肺:S7、S8、S9、S10、左肺:S8、S9、S10)気管支を亜区域気管支まで剖出した。
測定した排痰肢位は、1.旧排痰法で示される中葉区・下葉区の肢位、2.修正排痰法で示される中葉区・下葉区の肢位、3.新たに提案した3肢位とした。なお、提案した3肢位とは(1)仰臥位、(2)右側が挙上するように45度回転させた腹臥位(以下、右3/4腹臥位)、(3)左側が挙上するように45度回転させた腹臥位(以下、左3/4腹臥位)の3肢位である。剖出した肺をそれぞれの排痰肢位で定められた位置に置き、区域・亜区域気管支の床面に対する角度を測定し、末梢気管支が分岐部よりも挙上するものを良好群として検討した。
【結果・考察】
旧排痰法および修正排痰法では、右肺のS8とS10で亜区域気管支が不適切となる個体が存在し、左肺では亜区域と区域気管支が不適切となる個体が存在した。
新たに提案した排痰法では、右肺の中葉区S4、S5で、仰臥位の姿勢で総ての個体がドレナージ効果の期待できる結果となり、右下葉のS7とS8では仰臥位と右3/4腹臥位を組み合わせることで総ての個体のドレナージ効果が期待できる結果となった。S9とS10では3/4腹臥位にて総ての個体でドレナージが期待できる結果となった。
左肺の中葉区S4、S5に関しては、仰臥位でB4外側枝の分岐角度が大きな場合に不適切な角度となる個体が存在したが、左3/4腹臥位を組み合わせることで適切な気管支角度となり、十分にドレナージ効果が期待できる結果となった。左下葉区S8では仰臥位と左3/4腹臥位を組み合わせることで総ての個体でドレナージが期待できる結果となった。B9、B10では左3/4腹臥位にてドレナージ効果が期待できる結果となった。
以上の結果から、旧・修正排痰法を改変し新たに提案した3肢位は、これまでの排痰法より姿勢変化も少なく、解剖学的な気管支角度の検討においても全区域に対して有効な排痰肢位となり得ると考えられた。