抄録
【はじめに】当院では心臓弁膜症外科術後に対し、術第2病日より歩行を開始、術第5病日には病棟歩行(200m)自立を目標とする理学療法プログラムを行っている。今回、心臓弁膜症外科術後の離床においての進行状況について調査し、単弁手術群(以下A群)、2弁以上の複合弁手術群(以下B群)、冠動脈バイバス術(以下CABG)合併手術群(以下C群)に分けて調査し、術式によるプログラムの変更が必要であるか、また、3群間を通して術後病棟歩行期間に関与する因子の検討も合わせて行なった。【対象と方法】対象は2003年1月1日から同年12月31日までに当院心臓血管外科で行われた心臓弁膜症手術症例42名、A群:22名(男性15名、女性7名)、B群:10名(男性4名・女性6名)、C群:10名(男性7名・女性3名)について後方視的に調査し、3群間の術後病棟歩行自立までの期間と年齢・性別・術前の左室駆出率、呼吸機能・手術に関する各時間について調査した。統計学的処理はDrSPSS2を用い、3群間を一元配置分散分析と多重比較にて検定を行った。また、術後病棟歩行自立までの期間を目的変数、術式を含めた他の変数を説明変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。有意水準は、p<0.05とした。【結果】【結果】術式はA群:大動脈(以下A弁)10例、僧帽弁(以下M弁)12例、B群:A弁とM弁との同時手術2例、M弁と三尖弁(以下T弁)7例、M弁・T弁とMAZE手術1例、C群:CABGとA弁5例、CABGとM弁5例であった。手術時間はA群:256.5±60.4分、B群:248.5±24.7分、C群:347.5±60.4分(C群vsA・B群p=0.003)、麻酔時間は以下同様に341.1±71.2分、360.3±75.8分、422.3±72.5分(p=0.02)、人工心肺時間;104.9±22.8分、117.7±21.4分、145.9±27.6分(p<0.001)、大動脈遮断時間;71.1±16.5分、84.7±16.1分、100.3±28.0分(A群vs C群でp=0.028)、挿管時間;685.7±181.4分、853.3±204.2分、853.6±289.0分(p=0.053)、であった。また手術から病棟歩行自立までの期間についてはそれぞれ6.2±3.2日、5.7±2.6日、5.8±2.7日と有意差は認めなかった。(p=0.56)術後病棟歩行自立までの期間に寄与する因子は、NYHAのみでR2=0.16であった。【考察】当院における心臓弁外科手術において、各群間での有意差は手術時間、人工心肺時間、大動脈遮断時間で認められた。当院では術者は1名のため術者による影響はないものと考えられ、有意差のあった各時間に関しては、手術様式による影響が大きいと思われる。しかし術前の状態に各群間で有意差はなく、また手術から病棟歩行自立期間に有意差は認められないため、術式の違いによってプログラムを変更させる必要はないと考える。これは、重回帰分析結果からも術後病棟歩行自立までの期間に寄与する因子はNYHAのみであったことからも考えられる。