抄録
【目的】腕時計式心拍計(以下ハートレートモニター)による心拍数管理で無症候性心筋虚血を予防し、生活機能の改善を認めた症例を紹介する。
【症例】73歳、男性。平成15年7月当院入院、主訴は犬の散歩時など労作時の背部圧迫感であった。CAGにて3枝病変認め、平成15年8月他院にてCABG施行。術後、RCA領域虚血残存が確認され、3カ月後PTCA予定となったが、平成15年9月18日当院再入院し、インフォームドコンセント後、心筋虚血に対して非侵襲的に包括的心リハを行うことになった。平成15年10月14日から理学療法開始、ニードは「犬の散歩、車の運転、買い物ができるようになりたい」であった。合併症として糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症を有している。平成15年12月退院後現在も外来にて経過観察中である。
【リハプログラム】トレッドミル運動負荷装置NEW CASE(GEマルケットメディカルシステム社製)を使用した運動負荷試験時に無症候性心筋虚血が誘発されたため、運動時心拍数95bpm以下となるよう指導した。ハートレートモニターa3(ポラール社製)を購入後、活動時の装着を義務付け心拍数のセルフモニタリングを徹底させた。心リハ開始初期には監視下での歩行や自転車エルゴメータを実施、約2週間後から非監視型の運動療法に移行し、数回の外出・外泊時にニードである犬の散歩や買い物も行い安全性を確認した。また、血糖値や体重管理のためインスリン療法及び摂取カロリー量制限、心機能・腎機能・血圧管理のため薬物療法を行った。
【結果】BNP値は初回入院時292pg/mlで、1年後には114pg/mlまで低下した。朝食後2時間血糖値とHbA1c値は初回入院時は263mg/dl、8.2%でコントロール不良であったが、退院後は約100~200mg/dl、5~6%強で推移しコントロールできていた。尿素窒素値は約20mg/dl~50mg/dl、クレアチニン値は約1.5mg/dl~2mg/dlの高値を経過中呈していた。6分間歩行試験で再入院時と退院後10カ月の比較では歩行距離は410mから490mへ、自覚的運動強度は「少しきつい」から「楽」へ変化した。身体活動能力質問表では初回・再入院時4~5METs、退院時5~6 METs、退院後10カ月では7 METsへ向上した。老研式活動能力指標では初回入院時、退院後10カ月とも12点と高得点を示し、高いレベルを維持することができていた。抑うつ評価であるGDS15はいずれの時点でも抑うつ傾向は認められなかった。
【考察】本症例は活動時にハートレートモニターを利用し、客観的指標で運動強度を把握できたことにより、無症候性心筋虚血を予防することができた。また、活動を行えるという確信(身体活動セルフエフィカシー)も高まったことで、身体的・社会的・精神的生活機能を維持・改善することができた。