理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 717
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内部障害系理学療法
長期血液透析患者の筋力・筋持久力と反応性充血における筋力トレーニングの効果
*久家 直巳礒山 正玄
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抄録
【目的】本研究の目的は,長期間血液透析を要した患者を対象に局所的な筋力トレーニングを実施した後の前腕筋の最大筋力,筋持久力と組織血液中酸素動態よりみた反応性充血への効果を検討することであった。
【方法】対象は血液透析を受けている身体障害者療護施設入所者8名(58.7±5.8歳)であり,血液透析期間は平均93ヶ月であった。すべての対象者には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で測定およびトレーニングを実施した。対象者の最大前腕筋力,筋持久力は手指筋力測定器(SPR6800, 酒井医療)を用い,動静脈シャントを形成された腕の反対側にて測定した。最大筋力は,椅子座位にて上肢を体側に垂らし,握力センサをできるだけ強く握った時の力を測定した。筋持久力はできるだけ長く最大の力で握り続け,最大筋力の60%に減衰するまでの時間を測定した。駆血後の反応性充血を調べるため,組織血液酸素モニタ(NIRS) (BOM-L1TR, オメガウエーブ社)を用いた。測定手順は,血圧計のマンシェットを上腕部に巻き,NIRSのプローブを浅指屈筋上で上腕骨内側上顆より3cm遠位に装着した。5分間の安静の後,マンシェットの圧を260mmHgに上げて3分間駆血し,その後すばやく解放した後,さらに約10分間安静状態に戻るまで測定した。NIRSに関する変数として駆血解放後に酸素化ヘモグロビン,および組織血液中の酸素飽和度が安静レベルを通過するまでの時間(Tr),解放後ピーク値に至るまでの時間(Tm),解放後の最大変化量に対する駆血時の変化量の比(HRmax)を求め,さらに解放後の変化量の積分値に対する駆血時の変化量の積分値(HRarea)を算出した。筋力トレーニングはハンドグリップを用い,第1週目に最大筋力の60%の強さで50回収縮を繰り返し,その後1週毎に約20回ずつ回数を増加させた。これを非透析日の週4日ずつ6週間実施した。
【結果】すべての対象者が6週間トレーニングを継続できた。最大筋力は,トレーニング開始前の183±84 Newtonsからトレーニング後228±92 Newtonsに増加し (p<0.05),筋持久力も19±6secから31±8sec (p<0.05) に増加した。これに対し,反応性充血時の酸素動態の指標であるTr,Tm,およびHRmax,HRareaについては酸素化ヘモグロビン,組織中酸素飽和度のいずれにおいてもトレーニング前後で有意な変化はみられなかった。
【結論】長期血液透析を要した患者に対する局所の筋力トレーニングにより,筋力・筋持久力は改善されるものの,駆血後の反応性充血における筋組織中の酸素動態に関する改善は乏しいと考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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