理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1204
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内部障害系理学療法
心疾患患者に対する機能的体力評価
―Fullerton functional fitness testの臨床応用について―
*河野 裕治高橋 哲也熊丸 めぐみ山田 宏美廣瀬 真純畦地 萌横澤 尊代櫻井 繁樹安達 仁金子 達夫大島 茂谷口 興一
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抄録

【はじめに】心疾患患者に対する身体機能評価は,主に心肺運動負荷試験(CPX)で求められる最高酸素摂取量(peak VO2)や嫌気性代謝閾値(AT)によって行われる.理学療法士は,CPXの結果のみでなく,患者の日常生活活動能力の向上を図るために筋力や体柔軟性など各種体力構成要素の評価も重要視する必要があるが,心疾患患者に対する機能的体力の評価は標準化されたものがないのが現状である.1999年にRikliとJonesがシニア用の機能的体力評価法としてfullerton functional fitness test(FFFT)を開発した.今回われわれはこのFFFTを用いて,心疾患患者の機能的体力の評価を試み,心疾患患者の体力の評価法としてのFFFTの臨床的応用の可能性を検討した.
【対象】対象は,当院にて外来心臓リハビリテーション施行中の心疾患患者19例(男性16例,女性3例),平均年齢61.4(35-76)歳.テスト遂行に多大な影響を及ぼすと判断された脳血管障害および整形学的疾患を持つ者は除外した.
【方法】心臓外科手術後8週間以降または経皮的冠動脈再建術後5週間以降にFFFTを施行した.FFFTは日常生活動作に類似した6つのテストバッテリー(下肢筋力の指標として30-second chair stand,上肢筋力の指標としてarm curl,体柔軟性の指標としてchair sit-and reach,上肢帯柔軟性の指標としてback scratch test,敏捷性と動的バランスの指標として8-foot up-and go,下肢持久力の指標として2‐minute step test)から構成される.FFFTはCPX後に行い,FFFT施行中は心電図を連続監視した. FFFT各バッテリー時の心血管反応をCPX中の心血管反応と比較し,さらに,FFFTの各結果とCPXから得られたpeak VO2,ATなどとの関連性について検討した.なお,対象患者全員にテストの目的と手順,リスクについて充分な説明をし同意を得た.
【結果】全症例全テスト遂行が可能で,心電図異常など心事故の発生は認められなかった.FFFT各テストバッテリーの二重積は,arm curl,30-second chair stand,2‐minute step testの順で高かった.2‐minute step test 時の心拍数はCPX時と同等の値であったが,収縮期血圧はCPXの方が高値を示した.peak VO2は2‐minute step test と正の相関関係を認めたが,その他のFFFT各テストバッテリーの結果は,AT時VO2およびpeak VO2のいずれとも相関は認められなかった.
【まとめ】FFFTは心疾患患者の機能的体力評価として安全に施行可能で,全身持久力評価法としての妥当性も認めた.

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© 2005 日本理学療法士協会
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