抄録
【目的】虚血性心疾患の冠血流は、有酸素運動により改善することが報告されている。しかし、臨床においては有酸素運動に筋力トレーニングも併用されていることが多い。そこで、今回は筋力負荷(MU)と心肺運動負荷試験(CPX)による身体的負荷が冠血流速度に及ぼす影響について検討した。
【方法】対象は男性20名(18歳から33歳、平均22.9±4.8歳)。体型等の理由で記録不能例はMU:1例、CPX:3例であった。MUは多用途筋機能評価訓練装置(酒井医療社製BIODEX SYSTEMS3)を用いて、右膝に対して10回×5セット(60。/sec)を実施し膝伸展筋力体重比を求めた。CPXはトレッドミルを用いた症候限界性(予測最大心拍数90%)で実施し、呼吸代謝測定装置(Sesor Medics社製Vmax29)を用いて呼気ガス分析指標(嫌気性代謝閾値と最高酸素摂取量)を求めた。なお、MUとCPXの計測中はカフ法による自動血圧計を用いて血圧や心拍数を測定し、二重積(RPP)を求めた。冠血流速度は超音波診断装置(GEメディカルシステム社製Vivid7)を用い、探触子を下部胸部左縁やや左側において左冠状動脈前下行枝末梢部分を2Dドプラ法にて、MUとCPXの前後に計測した。被験者にはヘルシンキ宣言に則り、研究の目的や手順を説明して同意を得た。
【結果】冠血流速度は、MUにおいて負荷前0.15±0.04m/secに対して負荷後0.19±0.04m/sec、CPXにおいては負荷前0.15±0.03m/secに対して負荷後0.21±0.07 m/secでそれぞれ有意に増加した(共にp<.01)。RPPは、MUとCPXにおいて負荷前に対して負荷後でそれぞれ有意に増加した(共にp<.001)。また、冠血流速度と呼気ガス分析指標、膝伸展筋力体重比、RPPとの関連では、MUにおいて負荷後の冠血流速度と膝伸展筋力体重比のみが有意な相関を認めた(r=.56, p<.01)。
【考察】一般的に身体的負荷の効果としては、血中のEpinephrineとNorepinephrine濃度が増加しRPPが上昇する。今回、CPXとMUの身体的負荷によるRPPの上昇は交感神経の活性化を示したと考えられた。先行研究により、冠動脈造影検査を用いた精神的負荷前後での冠動脈容積は有意な変化を示さなかったことが報告されている。今回、CPXとMUで冠血流速度が増加したことは、冠動脈容積が変化せずに冠血流量が増加した可能性が推察された。よって、身体的負荷により心筋酸素消費量が上昇し、また冠血流量が増加したことにより冠血流速度の増加に結びついた可能性が考えられた。冠血流速度と膝伸展筋力体重比の関連においては、今後被験者数を増やし、さらなる検討をしていきたい。
【まとめ】冠血流速度は、MUとCPXにより有意な増加を認めた。