抄録
【目的】近年、高齢者の介護予防活動への注目が高まっており、各地で転倒予防教室等が開催されている。一方で島田らは、多くの転倒予防教室で行われているような集団体操のみでは効果が期待できないとしている。今回我々は当院近隣市町村の在宅高齢者を対象に老年症候群判定プログラム「おたっしゃ21」と運動検査を実施した。その結果より個人の持つ個々の問題点を発見し、検査結果のフィードバックを行うことで、転倒に対する意識の啓発を目的に転倒骨折予防教室を開催したのでここに報告する。
【対象】鹿児島県伊佐郡菱刈町と近隣市町村在住の63~87歳(75.8±4.75歳)、男性23名、女性47名の計70名であった。
【方法】検査内容は東京都老人総合研究所(以下、都老研)が開発したPCソフト「おたっしゃ21」と運動検査を実施した。まずおたっしゃ21にて質問調査18項目、運動検査3項目(握力・開眼片脚立位・5m歩行)について評価し、虚弱・転倒・低栄養・尿失禁・軽痴呆の計5種類の老年症候群リスクを判定した。次に運動検査として、外乱負荷試験、下肢筋力、閉眼片脚立位、Functional Reach Test(以下FR-T)、Timed Up&Go Test(以下TUG-T)等を測定し、都老研製作の運動能力測定基準値を基に5段階に標定し、運動検査の4項目については転倒リスクも判定した。検査終了後、結果の入力を行い、おたっしゃ21の判定結果と運動検査の判定結果を2枚の用紙にて対象者へフィードバックした。なお運動検査の判定については、エクセルを用い独自のソフトを作成して行った。
【結果】おたっしゃ21実施者70名中、何らかのリスクを有する者が44名であった。各リスクは低栄養が41名、転倒が35名となった。運動検査で転倒リスクを有する者は70名中21名、後期高齢者では42名中18名にリスクがみられた。運動検査では開眼片脚立位時間12名、FR-T8名、外乱負荷試験3名、TUG-T3名に転倒リスクがあった。5段階評価ではレベル2以下の者が62名、項目が複数であった者が30名であった。検査終了後からフィードバックまでは約1時間であった。
【考察】今回我々は転倒予防教室参加者への意識啓発を目的に、検査結果のフィードバックを行った。おたっしゃ21と運動能力測定基準値のデータを活用し、的確な問題点の抽出が可能であったため,個人の問題点に合わせたフォローアップ・プログラムの実施が可能になると考える。また作成したソフトにより説明者の内容の統一と短時間でのフィードバックが可能となった。対象者から「自分がこれほど劣っているとは思わなかった」との意見が聞かれた。今後の展開を望む声も多く聞かれ、意識の啓発も図れたと考える。今後は結果に基づき、運動機能を中心としたアプローチを計画し実践していく。また転倒以外の老年症候群への対応も実施していきたい。