理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 214
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生活環境支援系理学療法
介護老人保健施設における運動・体力評価の検討(第一報)
―運動・体力評価の現状の把握―
*本田 知久藤原 孝之山本 巌
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抄録
【はじめに】
現在、介護予防の一手段としての高齢者筋力向上トレーニング事業が行われており、我々の介護老人保健施設(以下、老健)でも自覚的運動強度を用いたマシントレーニングにて、動作性の向上・行動変容を目的に取り組んでいる。このプログラムを実践する施設や団体は全国で約500ヶ所になり、指示動作が可能であれば疾患や要介護度に問わず、施行可能と報告されている。我々の老健でも要支援から要介護4までの要介護高齢者を対象に施行し、行動変容や要介護度の変化を促す一要因となっている。しかし、要介護度によっては、本プログラムの運動・体力評価(以下、体力評価)では実施不可能な項目もあり、すべての要介護高齢者の体力を反映しているか検討の余地がある。本研究では、他老健の協力を得て、要介護度別に体力評価の各項目の実施可能率を明らかにし、現状の評価の適応を検討することを目的とした。
【対象と方法】
対象は老健にてマシンを使用したプログラムを施行し、体力評価を開始時と3ヵ月後に行なった利用者145名(男性53名、女性92名;平均年齢79.2±6.7歳)。要介護度別に要支援から要介護4の5群に分け、体力評価(握力、開眼片脚立ち、ファンクショナルリーチ(以下、FR)、座位体前屈、Timed Up & Go(以下、TUG)、2分間足踏み)の実施可能率を調査し検討した。
【結果】
対象者は要支援6名、要介護1が63名、要介護2が44名、要介護3が25名、要介護4が7名であった。体力評価の実施可能率は、握力と座位体前屈はすべての群で85%以上であった。開眼片脚立位とFRは要支援から要介護2までは70%以上、要介護3と4では40%以下であった。TUGは要介護3までは70%以上、要介護4では14.3%であった。2分間足踏みは要支援のみ100%可能で要介護度1から要介護4までは65%以下であった。
【考察】
正規分布における1SD を基準とすれば要支援から要介護2までは本プログラムの体力評価6項目中5項目以上が実施可能であり、要介護3と4では半分以下の実施可能率といえる。よって現状の体力評価は要介護2までの体力を示すには適していると考えられる。渡辺らは、介護予防の取り組みには生活体力を強化していくことが重要と報告しており、川越らによると要介護度非該当者と比較し、要支援では立ち上がりや片脚立位能力の低下が認められ、要介護1では歩行や洗身、要介護2では下衣・上衣の着脱、要介護3では移乗や排泄、要介護4では食事摂取、要介護5では嚥下や場所の理解の能力が低下してくると報告している。よって要介護3から5の高齢者の体力を簡便に評価できる評価法の標準化が急務であり、各要介護度の運動・体力特性を考慮しながら、現在開発、標準化している。
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© 2005 日本理学療法士協会
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